終わりに:米国株におけるアクティブファンド不振の理由を考える

近年の米国株市場では、今回ご説明してきました(1)コスト、(2)投資対象の広さ、(3)投資手法の違いの全てにおいて、アクティブファンドに強い逆風が吹き続けました。 

前回見ていただきました通り、様々な投資対象資産の中で米国株のみでアクティブファンドは苦戦しています。この理由は、米国株市場では投資家層が幅広くまた取引が非常に高速で行われるため市場が極めて効率的である、言い換えれば、情報が株価に織り込まれるスピードが他市場に比べてとても早い(注8)ためであると説明されることが多いようです。

(注8)例えば、好決算が発表されても短時間で株価が上昇するため、発表後に投資をしても利益を上げることは非常に困難という現象が事例として挙げられます。

筆者もこの市場の効率性は大きな理由の一つではあると思います。 しかしながら、この10年間の米国株市場の動向を考慮すると、アクティブファンドはインデックスファンドに比べて大きなハンディを負っていたとも考えています。以下の(2)と(3)の逆風の向きや勢いが変化するようであれば、米国株市場におけるインデックスファンド優位/アクティブファンド劣後の状況も変化するのではないかと考えます。

  • (1)コスト

常時アクティブファンドがコスト高

  • (2)投資対象の広さ

近年の米国株では、アップルやアマゾンという超大型株が市場を牽引してきたため、「小型株効果」が見られません。例えば、2021年8月末までの10年間で、米国の時価総額上位50の超大型銘柄群は約400%のリターン(注9)をあげていますが、小型株のリターンは約260%(注10)に留まっています。 多くのアクティブファンドが銘柄選択の目的で行なっている小型株の組み入れがこの間は足枷となったと言えます。
(注9)出所:FTSE Russellが算出公表しているRussell US Indexesの中のRussell Top 50 Mega Cap Indexのリターンから計算https://research.ftserussell.com/Analytics/FactSheets/temp/40f9f6c3-8bd7-43de-87cc-a67b6c11d057.pdf
(注10)出所:FTSE Russellが算出公表しているRussell US Indexesの中のRussell 2000 Indexのリターンから計算
https://research.ftserussell.com/Analytics/FactSheets/temp/7c89a66a-007a-43de-b063-d2565de53dd2.pdf

(3)投資手法の違い

  • ①キャッシュ比率

米国株で多くのアクティブファンドがベンチマークとし、インデックスファンドが連動を目指すのは、S&P500 Indexです。同インデックスは 2021年8月末までの10年間で約354%のリターン(注11)を挙げています。アクティブファンドの多くが保有しているキャッシュポジションはこの間はパフォーマンス上大きなマイナス要因となっています。 
(注11)出所:S&P Globalが算出公表しているS&P 500 Index(USD Total Return)のリターンから計算
https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-500/#overview

  • ②投資判断の傾向(順張り/逆張り)

近年の米国株市場は時価総額上位の超大型株が市場全体の上昇をリードしてきました。2021年8月末までの10年間のリターンで見ると、 S&P500指数は約354%(注11)の上昇であった一方で、現在の時価総額第1位のアップルと第2位のマイクロソフトは約1,000%(注12)、第3位のアマゾンは約1,500%(注12)の上昇となっています。ところがアクティブファンドの運用者は、このような大化け銘柄の発掘に成功しても株価急上昇過程で投資妙味が低下したと考え、(部分)売却により投資比率を引き下げてしまう可能性が高いと思われます。インデックスに勝つためには、株価が連続して上昇していく銘柄を、できる限り売却せずにインデックス構成比率以上で継続保有もしくは買い増しによりさらに投資比率を引き上げることが必要です。しかしながら、プロの運用者であっても株価が上昇を続ける中でそれを冷静に実行することは極めて困難です。また同じ理由で、売却した銘柄に売却時よりも高い株価で再度投資することも大変難しいですし、できたとしても投資比率は以前より低い水準にとどまってしまうと思われます。

(注12) 出所:各社の株価データから計算

次回は、3.(未来) それぞれが優位と思われる市場環境の観点から、アクティブファンドとインデックスファンドの特徴を比較します。