温暖化問題は食糧など生活全般に波及

また、牛のゲップには、二酸化炭素の25倍もの温室効果があるメタンが含まれている。ゲップを出すのは、4つの胃を持つ、牛、ヒツジ、ヤギなどの反芻動物だ。北海道大学大学院農学研究院の小林泰男教授によると、牛のゲップは、世界の温暖化ガスの4%を占めるそうだ。

このため、牛などの肉食をやめようとする運動が勢いを増している。代替肉の開発が進み市場にも出始めたが、同時に人間に必要な栄養素のすべてを含むといわれる昆虫の摂食に対しても真剣な取り組みが始まった。

高齢者の中には、戦後の食糧難の時代に佃煮風のイナゴやハチの巣の子を食した人は多い。ただ、昆虫を食べるのは気味が悪いとする人は少なからずいる。しかし、20~30年以上前には、ほとんどの欧米人は生魚を食べるのを気味悪がったものだが、いまや寿司が大好物の欧米人は多い。昆虫も炒めたり粉状にしたりと様々な調理法のもとで、次第に慣れ摂食が進んでいくのではないだろうか。カブトムシ、イナゴ、バッタ、アリさらにはイモムシなどが昆虫食として一般化しそうだ。世界の人口が、現在の77億から2050年には97億へと増加すると予想されており、食料の供給面からも昆虫食は欠かせないテーマといえる。

なお、アメリカでは、個人レベルでの温暖化対策として、「Fly less、Drive less、Waste less」が1つのスローガンになっているそうだ。膨大なエネルギーを使用する飛行機に乗る回数を減らそう、まだまだガソリン車が主体である車の運転は減らそう、焼却の段階で多くのエネルギーを使用する食料廃棄物を減らそうというものだ。

最近の気候変動は徐々に変化するのではなく、非線形的に変化し、ある日突然に不可逆な状態になってしまうとする専門家が増えている。年金基金等の機関投資家は、温暖化対策の遅れる企業の株式を売却するダイベスト(divest)の動きを積極化している。政府はもちろんだが、あらゆる組織が、また一人ひとりが結集しての対策が不可欠なときだ。
 

執筆/大川洋三
慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。
著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。