温暖化解消への目標と現状の大きなギャップ

2015年に採択されたパリ協定は、2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みであり、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より低く、できれば1.5度に抑える努力をするものである。このため、できるだけ早く世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガスの排出量と森林などによる吸収量のバランスを実現できるよう、世界が共同して取り組むことになった。

日本政府は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年比で46%削減し、2050年には実質ゼロ(カーボンニュートラル)にするという高い目標を宣言した。しかし、2021年7月の新しいエネルギー基本計画案では、2030年度の総発電量のうち、再生可能エネルギーを現行の2割程度から36~38%と大きく引き上げたにもかかわらず、石炭火力はなお19%と設定しており、欧州などのGX(グリーントランスフォーメーション:緑転)への取り組みには、なお出遅れている感がある。

温暖化の要因は、電力や製鉄、自動車などの産業界だけではない。猛暑続きでエアコンに依存する人は増加する一方だが、このエアコンによる温暖化効果も大きい。エアコンを動かすのは電気であり、発電所が石炭や天然ガスに依存し続けると、発電所から排出される温室効果ガスは増大する。現在エアコン保有率の低い、アフリカ、ラテンアメリカ、アジア、中東などでも、今後は所得の増加に伴ってエアコン使用率は飛躍的に増大する。エアコンのエネルギー効率を高めることが緊急課題だ。