finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

金融経済教育推進機構は面白いコンテンツを提供できるか? 経験豊かな金融OBの出番に

文月つむぎ
文月つむぎ
2023.12.04
会員限定
金融経済教育推進機構は面白いコンテンツを提供できるか? 経験豊かな金融OBの出番に

「資産運用立国」の実現に向け、様々な施策が盛り込まれた「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」が11月20日の衆議院本会議で可決、成立した。本会議での採決に先立つ衆参両院の財務金融委員会における審議を聴いていると、特に金融経済教育推進機構(以下、「機構」)について質問が集中しており、関心の高さがうかがわれた。

機構に対する質問の論点は大きく①中立性、②天下り、③提供コンテンツ――に整理される。

まず「中立性」について、「認定アドバイザーの資質や中立性はどのように担保するのか」との質問があった。これに対し政府側は、「機構による認定時の審査及びその後の監督を通じて、適切な資質及び中立性を担保する。個別相談事業においては、ライフプランの作成とか、資産形成に資する税制優遇制度や年金の仕組みについてなど、一般的な質問に応じることを想定しており、個別の証券会社や金融商品の紹介を行うことは予定していない」と答えた。「収入については、アドバイスフィーのほか、企業が従業員に対する例えばセミナーを行う際には講師として派遣するなど、いろいろな面で支援していく。」とも回答している。

「中立性」は国民の信頼を得るうえで重要な要素であるが、「収益性」と両立させることは難しい。ましてや、金融アドバイスフィーを支払うことへの理解やフィーの見える化が進んでいない我が国において、アドバイスフィーやセミナー講師代だけで現役世代の方々が生活していくのは困難だろう。そうであれば、ここは資産運用業界に精通したOBの活用が望まれるところだ。例えば、活気や意欲がみなぎっている60代~70代の方々も少なくない。年金受給者であれば、とりあえず経済的な心配は小さいだろう。また、第2の人生では、(今度こそ!?)世のため、人のために自身の経験や知識を役立てたいと思う方々もいらっしゃるのではないか。

「天下り」についても質問が集中した。「機構の理事長は内閣総理大臣が任命し、国の認可を受けて、理事長が理事や運営委員を決める。また、国も予算を出すとなると、関係省庁や日本銀行からの天下り先となる可能性がある」――。これに対し、政府側は「任命手続の中で、天下りとの批判を受けることがないように、適切に対応していきたい。」と返している。

確かに、理事など中枢を担う職への安易な天下りは厳に慎むべきだが、実務運営において、「適材適所」の考えの下、透明性を保ちつつ金融行政に通暁した方々に活躍してもらうことは、組織の品質維持・向上には必要ではないかと思うところではある。

「提供コンテンツ」については、「認可法人に移行し、全銀協や日証協と一緒にすることによって、投資促進のための教育、広報という傾向がなお一層強まるのではないか。また、既に民間で金融教育コンテンツは山のように作られているところ、機構ではどのようなコンテンツを作っていくのか」との質問が飛んだ。

政府側は、「消費者教育の視点を重視する点に変わりはない。資産形成教育にも力を入れていくほか、家計管理や生活設計、詐欺的な投資勧誘等の金融トラブルに遭わないための教育等にもバランスよく取り組んでいく」と応答した。「また、既存コンテンツの集約、整理を進めるとともに、学生、社会人、高齢者等の年齢層別に、資産形成ではなく、家計管理や生活設計等々幅広いテーマを取り上げたコンテンツ等を初心者でも分かりやすい形で作成していく」とも答えている。

さらに、「そもそも、金融広報中央委員会や民間企業が行ってきたこれまでの取組みとの違いは何か」との問いもあった。正直、筆者も疑問に思う。長年、民間企業を始め、業界団体、日銀などが多岐に渡るコンテンツを使って金融教育に取り組んできたものの、いまだに金融教育を受けたと感じている国民が少ない状況にある。国の予算も使いながら、新しい推進機構を作ったからといって、果たして、国民の金融リテラシーを飛躍的に高めることが出来るのだろうか。

この点に関し政府側は、「実施主体が民間の金融関係団体、金融機関では、結局のところ、金融商品の販売目的であるのではないかというふうに懸念されて受け手に敬遠されるといった指摘もある。機構では、より一体的な形で効率的、効果的に実施することを戦略的に検討していく。国が関与を行うことで、金融トラブルの予防とか、中立的な立場から広く国民に行き届くよう金融経済教育を実施することが可能となる。」と回答している。

つまるところ、「徹底した中立性のもと、資産運用に関わる幅広い知識を効率的に提供する」ということだ。しかしながら、筆者の経験ではあるが、政府が提供するコンテンツは、間違ってはいけないとか、必要十分な情報を提供するといった想いが強くなりがちだ。そのため、「これは分かりやすい! これは面白い!」と評判になった事例はほとんど聞いたことが無い。正直なところ、今回の機構が画期的なコンテンツを作成するとはあまり思えないが、先述のOB諸氏の話術には期待がある。人生経験が豊富で、資産運用業界の裏事情も知り尽くしている方々は、安定的な資産形成のためにやるべきこと、また、やってはいけないことを、実体験を踏まえて分かりやすく説明することが出来るように思う。こうした方々が活躍できる組織作りを是非とも考えて欲しい。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #金融リテラシー
前の記事
資産運用タスクフォースに期待する「ブレーキ役」 
~外部委託とVC育成~
 
2023.11.06
次の記事
コンプライアンス体制の不備、フィービジネス転換の遅れ… 「法人IFA調査」で浮き彫りになったIFAの課題
2023.12.21

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 

2026.09.24

「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩

2026.09.10

株式市場の活況を次の改革へ―PTS・長時間取引・トークン化で日本株の競争力を高める

2026.09.03

販売現場の不祥事を誰が止めるのか――保険代理店・IFAの監督に必要な「多層管理」

2026.08.17

「口座を開く」から「資産形成が根づく」へ――日証協の調査が示す国民皆資産形成への次の一手

2026.08.10

個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―

2026.08.05

GPIFの国内投資を国富の拡大につなげるには――「金利のある世界」で問い直す年金運用

2026.07.22

「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

2026.07.10

速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台

2026.07.02

人生の出口にも、設計図を――終活を「思い」から「手続きの手がかり」へ

2026.06.22

おすすめの記事

「IFA管理のガイドライン策定を」――日証協が提言を受け新作業部会を設置

川辺 和将

物色のテーマ、株価指標さえも時には変わる…ベテランファンドマネジャーが平成バブルで得た教訓

finasee Pro 編集部

金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 

文月つむぎ

日米利上げでSBI証券の売れ筋は国内株が一段安、「AI開発減速」の世論は「世界のベスト」「WCM」を押し上げる

finasee Pro 編集部

みずほ銀行で「キャピタル世界株式」がトップに、想定最終利回り約2.7%の「グローバル債券ファンド」も人気化

finasee Pro 編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
物色のテーマ、株価指標さえも時には変わる…ベテランファンドマネジャーが平成バブルで得た教訓
金融行政方針が示す「次の金融」の輪郭――資産運用立国を、商品からインフラへ 
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
「IFA管理のガイドライン策定を」――日証協が提言を受け新作業部会を設置
「攻め」と「守り」の均衡点はどこに?--2026事務年度金融行政方針のポイント解説
「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩
“霞が関文学”で読み解く金融界② 仕組債販売ルール指針案と「文脈検査の拡張」
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
金利上昇も「貯蓄から投資へ」の逆回転見られず、ラップ契約額は初の30兆円台に――資産運用業協会長の9月定例会見
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
「攻め」と「守り」の均衡点はどこに?--2026事務年度金融行政方針のポイント解説
三菱UFJ銀行でバランス型の「ウェルス・インサイト」がトップ、毎月分配のアクティブファンドもランクアップ
三井住友銀行で「世界のベスト」が一番人気、「日経225」が落ちて「ダウ・ジョーンズ」や「MSCIコクサイ」がランクアップ
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
みずほ銀行で「キャピタル世界株式」がトップに、想定最終利回り約2.7%の「グローバル債券ファンド」も人気化
日本版IFAに迫る自主規制の刃、そのとき求められる真の「独立」とは何か
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
金利上昇も「貯蓄から投資へ」の逆回転見られず、ラップ契約額は初の30兆円台に――資産運用業協会長の9月定例会見
「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩
預り資産額1兆円を見据えるブレイクスルーの全貌  ゴールベースとチーム体制でリテール金融を変える
【金融風土記】「豊かさと分散」の経済圏――山形の金融動向とは
日本版IFAに迫る自主規制の刃、そのとき求められる真の「独立」とは何か
【第2回】債券ファンドは何を見て選ぶのか
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
お客さまとその家族を深く知り、寄り添い続け、総資産の増加を目指すストックビジネスへ case of 横浜銀行
「真剣な姿勢できれいごとを貫く」時代を捉え、顧客に寄り添い、自ら変革し続ける case of 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
上位4ファンドの「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」「グロース・オポチュニティ」にそれぞれの事情=2026年8月純流入額トップ20
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【日本株アクティブファンド編】
「顧客本位」は現場に届いているか――金融庁「令和7年度実績評価書」から考える、次の一歩
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら