――新NISAの普及に向けて販売会社の取り組みとして何が重要だと思いますか?
近年の大きな環境変化にインフレ(物価上昇)があります。銀行窓販が始まってから、インフレを実感することはありませんでしたが、今まさに猛烈にインフレを意識させられる社会になってきました。これが、これまでと最大に違うことです。インフレについて実感を持って伝えられるタイミングですので、インフレが話のきっかけとして有効なワードになっています。インフレと低金利という現状が話のきっかけになれば、資産運用について考えていただきたいとNISAにつながる話になります。これは、世代を問わないで話ができるので、良い機会になると思います。
また、銀行には、税金の支払いの関係で来られるお客様も比較的多いので、税金のかからないNISA制度の話をするきっかけになるかもしれませんし、定期預金の満期の際にご来店されたお客様には税金のかからないメリットを知っていただくきっかけになるでしょう。特に、地域金融機関の方々は、地域に密着されていて、給与の振り込み口座から全ての金融取引がそこにあるという身近さが強みになっています。新NISAのような生涯にわたって使っていく制度の取り扱いには、親和性が高いと感じます。口座が新NISA1つに集約されるリスクについても、地域金融機関の方々は「もし他の金融機関にNISAを開設されてしまったら」ということのデメリットを強く感じられるのではないでしょうか。
それほど、大きな変化のきっかけになりそうな新NISAは、第二の銀行窓販の開始ともいえるような節目になると思います。そして、税金やインフレなどという日常の生活に身近な話は、日々お客様と接しておられる地域金融機関の皆様だからこそ、話題にしやすい話だと思います。「つみたてNISA」でネット証券で多くの新規口座が生まれたように、新NISAをきっかけに、地域金融機関に多くのNISA口座が新設されるということも期待できると考えています。
そのためには、1人でも多くの方がNISA口座を開設することです。NISAの口座数が、一定以上になれば、NISAの口座獲得は加速度的に進展すると思います。たとえば、私が銀行に入った20年以上前には、銀行の支店に出入りしている生命保険の営業の方々は、新入社員が支店に配属されると、当然生保に入るものだと申込書を持ってやってきました。支店の中でも生命保険に入るのは当たり前だという雰囲気がありました。投信は、そこの領域にまったく届いていないのが実情だと思います。周りで多くの人が「投信のつみたてやっているよ」という雰囲気にまで至っていないのが現状です。
それこそ、「社会人になったら、株式インデックスファンドを毎月5千円つみたて投資することは常識」という時代が来ても良いと思います。簡単なことではないと思いますが、コツコツと目の前のお客様に新NISAについて説明を続けることで、いずれ、その地域金融機関がお客様の資産形成の中心になるということが起こると思います。一生涯にわたって続く口座だからこそ、新NISAは地域金融機関が主役になる制度だと思います。私どもも精一杯バックアップして、この運動を盛り上げていきます。