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【金融風土記】宮崎県には地方創生の「優等生」も! 地域金融機関の集約が進む

佐々木 城夛
佐々木 城夛
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
2025.06.26
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【金融風土記】宮崎県には地方創生の「優等生」も! 地域金融機関の集約が進む

 

江藤拓(前)農林水産大臣が、失言によって事実上更迭されたのは5月21日のことです。メディアの関心は、後任の小泉進次郎農林水産大臣の備蓄米放出対応に移っています。振り返ってみれば、江藤前大臣の辞任からまだ1カ月しか経っていないことに驚かされ、加速化する一方の環境変化を改めて意識させられます。

 

その江藤前大臣については、大手メディアから「農林族議員」と報じられています。農業・林業には土地が必要であり、それが文字どおりの選挙地盤になるため、江藤前大臣の選挙区である宮崎県の県内事情に注目し、県内の金融動向などをごく簡単に説明させていただきます。

 

所得に占める第一次産業比率が全国一

国土地理院から還元されている宮崎県の面積は約7734平方キロメートルであり、都道府県別で16位、九州では鹿児島県に次ぐ広さです。

県内総人口は、昨年10月1日時点で103万361人となっており、34位の大分県と36位の山形県に挟まれた35位になります。多い順に上から並べた際には「下位4分の一」近くに位置し、中核市との比較では、109万人の仙台市と98万人の千葉市の間に挟まります。そこそこの面積の中にそれほど多くない人が居住しているわけですので、そこから導き出される宮崎県の人口密度は、当然低くなります。

 

この結果、農業・林業に利活用される面積が広がるとともに、“日本のひなた”とアピールする農業生産に適した温暖な気候も相まって、食料自給率が生産額ベースで253%と全国一位になっています。余剰分を県外に出荷している農業県に他なりません。宮崎県ときいて、東国原英夫元知事がマンゴー(「太陽のタマゴ」)などの県内特産品をアピールする様子を連想される方も少なくないことでしょう。

 

【宮崎県】快晴下の都井岬(御崎馬の放牧)
 

注目を集める都城市の移住支援

農業従事者の高齢化が課題となって久しい状況であり、宮崎県も例外ではないようです。高齢化は人口減少に直結しますが、宮崎県では、1997年から人口減が常態化した模様です。

 

全体の趨勢に続いて基礎自治体別の動向に着目したところ、それ以外の基礎自治体が全て対前年比で減少する中、ひとつだけ増加している自治体が認められました。県内第二の都市である都城市で、2023年10月からの1年の間にも1456人が増加しています。今回、宮崎市・延岡市・都城市の県内三大自治体を抽出しましたが、対照的な結果が窺えます。

 

五大都市圏の中心都市ならともかく、国全体が人口減に悩む中、何もせずとも人口が増える地方都市はありません。このため都城市の取組施策を掘り下げたところ、①妊産婦の検診費用、②第一子からの保育料、③義務教育終了時までの医療費、のシームレスな完全無料化によって“子育て三ツ星タウン”を標榜するほか、きめ細やかな移住応援給付金を支給するなど、大胆な施策が講じられていました。

 

恥ずかしながら今回初めて知りましたが、同市はふるさと納税の寄付金額で全国の自治体のトップとなっており、そこから得た財源が移住者等への手厚い支援にも回る正の相乗効果がみられているようです。筆者自身のふるさと納税制度への評価はニュートラルですが、制度の導入・実施に伴うマイナス面が相対的に数多く報じられる印象を受けます。そうした一方で、制度を上手く活用できている自治体もある、という見本のように感じます。

 

飲食天国と“県外大手資本の有力子会社”

1960年代初頭から70年代後半にかけて、宮崎は新婚旅行先のメッカとして大変な人気を集めており、高度成長を支えるシンボルとして、都市部に住む若者の憧れの地だった模様です。温暖な気候に加え、宮崎牛・伊勢海老・鰻・鰹・アオメエソ(目光)などの豊富な食材のほか、串に刺さない焼き鳥や、チキン南蛮などの郷土料理もあります。こうした飲食関係事業者の資本は相対的に小さく、大手チェーン化して県外にも進出するような動きは、ブロイラーなどの素材系に限られる模様です。

その一方で、県内には、以下の表に記載した以外にも、ミネベアアクセスソリューションズ(ホンダ系)・宮崎キヤノン(キヤノン系)・宮崎くみあいチキンフーズ(全農チキン系)・富士フイルムワコーケミカル(富士フイルム系)・南日本ハム(日本ハム系)・デンソー宮崎(デンソー系)など県外大手資本による地域子会社が多数設立・運営されています。さいたま・千葉・福岡・仙台などが“支店経済(都市)”と呼ばれることがありますが、さながら“子会社経済”の印象を受けます。

 

分野

県内出身者・事業者[敬称略]

政治

江藤拓(前農林水産大臣)、古川禎久(元法務大臣)

経済

ソラシドエア(全日空系地域航空)、霧島酒造(芋焼酎「黒霧島」)、旭有機材(旭化成系メーカー、塩ビ・フッ素樹脂配管などを製造)、児湯食鳥(ブロイラー大手)、ミヤチク(食肉加工・生産)、ハンズマン(地域ホームセンター)、富岡建設(地場ゼネコン大手)、日本情報クリエイト(不動産業向けDXサービス)

芸能など

東国原英夫(前知事)、斉藤慶子、堺雅人、浅香唯、温水洋一、蛯原友里、永瀬正敏、紗栄子、松田弘(サザンオールスターズ)、鬼束ちひろ、秦基博、オカリナ(おかずクラブ)、やす(ずん)、イワクラ(蛙亭)、久保田かずのぶ・村田秀亮(とろサーモン)

メディア

宮崎日日新聞社、夕刊デイリー新聞社、MRT宮崎放送、テレビ宮崎(UMK)

 

本稿記述時点では、県内の串間市出身の東村アキコが原作のみならず脚本と美術監修も担った、映画「かくかくしかじか」も公開中です。台詞の中に宮崎の県民性を話題にする箇所が何回かあるようで、それが宮崎県人の心をくすぐるようです。

 

視聴できる民放のテレビ(地上波)が2局しかない環境も、時折話題になるようです。テレビ東京はもちろん、テレビ朝日の系列局がないため、お笑い芸人などから「キャンプ地なのにワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が見れない」と語られています。

 

県内1信用組合・1農業協同組合に集約

県内には、宮崎市にみずほ銀行が大手メガバンクグループで唯一出店しているほか、九州内に本店を構える福岡銀行・西日本シティ銀行・肥後銀行・大分銀行・鹿児島銀行の5つの地方銀行と第二地方銀行の南日本銀行が進出しています。これらに向き合う県内金融機関は、銀行・信用金庫・信用組合・農業協同組合の合わせて7つに集約されています。

 

県内に本店を構える預貯金取扱金融機関[順不同]

業態

内訳[本店所在地]

銀行[2]

宮崎銀行[宮崎市]、宮崎太陽銀行[宮崎市]

信用金庫[3]

宮崎第一[宮崎市]、延岡[延岡市]、高鍋[高鍋町]

信用組合[1]

宮崎県南部[日南市]

農業協同組合[1]

みやざき(宮崎県農業協同組合)[宮崎市]

 

かつて県内には、西臼杵郡日之影町にあった日之影信用組合と、隣の同郡高千穂町にあった高千穂信用組合が1980年に合併して発足した比較的小規模な宮崎県北部信用組合がありました。その2年後の1982年には、南郷町にあった外浦信用組合と最南端の串間市にあった串間信用金庫が合併して宮崎県南部信用組合が発足しました。

 

それから約25年にわたって南北の2信用組合体制となっていました。現在も、佐賀県内では佐賀東・西の2つの地域信用組合と職域信用組合である佐賀県医師信用組合の3信用組合となっているため、それと似たような構図だったわけです。その後の2006年に、2つのうち宮崎県北部信用組合が県境を越える形で熊本県の熊本県信用組合と合併したため、県内には1信用組合だけが残る形となりました。

 

また、2024年4月には、県内の13の農業協同組合が大同団結して宮崎県農業協同組合が発足しました。その1年後には宮崎県農業協同組合中央会(JA宮崎中央会)ほか連合組織とも法人としての統合を行ったため、単位農協としては日本最大規模になった模様です。2023年1月公表時点の正職員だけで2,656人もの陣容を擁しており、文字どおり巨大な組織が構築・運営されています。

 

信用金庫業界内にもかねてから再編構想が話し合われていた模様であり、2018年には宮崎信用金庫と都城信用金庫が合併して宮崎都城信用金庫が発足しました。その2年後の2020年にはさらに南郷信用金庫と合併し、宮崎第一信用金庫が発足しました。この結果、現在は県内3信用金庫体制となっています。

 

銀行については、ごく簡単な分析を行いました。決算短信ベースの数値を機械的に加算して算出した大まかな傾向値になりますが、預金については地方銀行・第二地方銀行の平均の伸びを両行とも下回っています。一方、貸出金とその中の住宅ローンほか住宅関連融資については、宮崎銀行が地方銀行・第二地方銀行の伸びを大きく上回っています。数値の上では、宮崎銀行の昨年度の活動は融資への取組みに優先して取り組んだ事態が窺えます。

 

リーマンショック後の経営悪化により、2010年に130億円の公的資金注入を余儀なくされた宮崎太陽銀行ですが、2022年に、期限まで2年半残した前倒しの形でこれらを全て完済しています。既述のとおり30年近く人口減少が続く厳しい地域経営環境下でも、預金・融資に一定の成長がみられることが決算短信から窺えるため、地域からの信頼を回復させていると思料します。

 

投資を考えられる際には

県内の証券取引所上場企業は、東証プライム上場企業が宮崎銀行と旭有機材の2社、他の取引所を含む総数で7社にとどまる模様です。

プライム上場のうち、宮崎銀行の株価に回復基調が認められる一方、米国での半導体関連投資の停滞や中国での需要減少が影響した旭有機材の株価は軟調な傾向を示しています。地方銀行の場合、県内経済(全体)のマクロ的な影響を受けることを余儀なくされるため、中期的には、県内の有力企業である旭有機材の業況がもたらす影響も小さくないかもしれません。

 

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著者情報

佐々木 城夛
ささき じょうた
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
1967年東京生まれ。1990年慶應義塾大学法学部法律学科卒、信金中央金庫入庫。欧州系証券会社(在英国)Associate Director、信用金庫部上席審議役兼コンサルティング室 長、静岡支店長、地域・中小企業研究所主席研究員等を経て2021年4月に独立。2023年6 月より現職。沼津信用金庫非常勤参与。 「ダイヤモンド・オンライン(ダイヤモンド社)」・「金融財政ビジネス(時事通信社)」ほか連載多数。著書に「いちばんやさしい金融リスク管理(近代セールス社)」ほか。HP アドレスは https://jota-sasaki.jimdosite.com/
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