あらすじと登場人物

社会人経験も約10年となり、任される業務は増える一方なのに、なかなか貯蓄額は増えていかない高橋さん。そんな高橋さんの元に、お金の神様が投資の基本を授けに現れました……。

高橋啓太

営業職の会社員。お金に関する教育をほとんど受けてこなかった。アイドル鑑賞が生きがい。32歳。

家計・投資の神
家計再生コンサルタント

横山光昭さん

株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を得ている。これまでの相談件数は23,000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は、シリーズ85万部超の最新作『貯金感覚でできる3000円投資生活デラックス』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、計146冊、累計340万部となる。

投資ってなぜ必要なんですか?

横山さん:そもそも投資とは「利益が見込める対象に、自分のお金を投入すること」なんだ。利益のことをリターンとも言い換えられるよ。

高橋さん:はい、それくらいはわかります。

横山さん:で、投資には短期的に大きなリターンを狙うタイプのものもあれば、長期的にコツコツと資産を積み重ねていくタイプもある。高橋くんがイメージしているのは、どちらかと言うと前者のほうでしょう?

高橋さん:はい、そうですね。

横山さん:でも、基本的に投資にはリスクがつきもの。だから、みんながみんな自分のお金を投じて金融商品を買うところまではいかない。特に日本人は世界的に見ても預貯金の保有割合がとても高いことでも知られているんだ。

高橋さん:ああ、そうなんですね(……僕は預貯金すら少ないけど)。

横山さん:これは日本で金融教育を受ける機会が圧倒的に少ないことが背景にあるんだけど、まあそれはここで言っても仕方ない。そこでまず「なぜ投資をすることが大切なのか」というところから説明するね。ズバリそれは、将来、資金が不足する可能性を1%でも下げるため。

高橋さん:不足する?

横山さん:「老後2000万円問題」って数年前にニュースでよくとり上げられていたの、覚えているでしょう? あれはつまり、調査した統計データをもとに試算すると、老後30年間生きるとすれば、生活費が年金だけじゃとても足りないですよ、貯蓄は最低でも2000万円くらいは用意しておいたほうがいいですよ、という話だったんだ。

高橋さん:2000万円……。

横山さん:もちろん、これは毎年の統計データによって大きく上下するから、うのみにしてはいけないけどね。直近の2019年のデータでは、毎月の不足分は約3万3269円。老後30年間で約1200万円が不足するという計算になる。まあ、あくまでこれも目安でしかないけどね。もう1つ投資をする重要性にからむ話として、インフレについて理解しておいたほうがいいね。

インフレってなんですか?

高橋さん:インフレ? ああでも聞いたことはありますよ。物価が上昇するってやつでしょう?

横山さん:そのとおり。インフレ(インフレーション)とはモノの値段が上がる現象のことで、お金の価値が下がることをさす。逆のデフレ(デフレーション)とはモノの値段が下がることで、お金の価値が上がること。

高橋さん:「お金の価値が上がったり下がったりする」っていうのは、例えばこの間まで100円で買えたモノが120円になったり、80円になったりするってことですか?

横山さん:そうです、理解が早いね。で、物価上昇があまり起こっていない日本では実感がないかもしれないけど、先進国ではインフレは急激に起こるものではなくて、少しずつ、それこそ20年、30年という年月をかけて少しずつ積み重なっていくイメージなんだ。

高橋さん:つまり20年前、30年前と比べると物価は上昇しているってこと?

横山さん:そういうこと。でもここで考えないといけないのは、物価が上がっているということは、さっきも言ったとおりお金の価値は下がっているということ。お金はずっと寝かせておくだけでは資産価値がどんどん目減りしていっている、ということなんだ。例えば1%のインフレ率で物価が上昇したら、1年後には今の100万円は99万円の価値になるイメージなんだ。

高橋さん:何もしていないのに?

横山さん:そう。だからこそインフレ対策のために投資で資産を増やし続ける、ということが大切なんだ。おまけに、近年は銀行の普通預金の金利は0.001%程度の水準。銀行に預けてボーッとしていたら「インフレに負ける」くらいだよ。つまり、何もしないということはそれ自体がリスクになってしまう。

高橋さん:何もしないこと自体がリスク……。