コロナ禍が東京への一極集中を変えるかもしれない

しかし、コロナ禍のせいで東京にもこれまでと違った動きがみられるようになった。

地方でのテレワークを志向する人が増加するなど、東京への一極集中が修正される新たな動きが出てきた。総務省によると、2020年の東京からの転出者数は40万1805人と前年比で4.7%増え、比較可能な2014年以降で最大となった。転入から転出を引いた転入超過数も3万1125人となり、2019年に比べて62%減と大きく減少した。

転出先は近隣の県だ。2020年の神奈川県の転入超過数は東京に次いで多く2万9574人、千葉県は1万4273人と2019年から約5割も増加した。この傾向は2021年になっても継続している。

大手企業にも脱東京の動きが出てきた。パソナグループは兵庫県の淡路島に本社機能を移転することになり、注目されている。 

コロナが収まった後にも、こうした動きは変わりそうにない。将来、この機を振り返ったとき、国土の均衡ある発展が長年の課題であった日本が、本格的な地方創生のスタートを切った時と位置付けられているかもしれない。

東京と地方とのバランスのとれた発展を期待したいものだ。

執筆/大川洋三 慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。 著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。