信託報酬は低いことが「正義」なのか?

ところで、信託報酬は低ければ低いほど良いのでしょうか。

確かに信託報酬を負担する側である受益者からすれば、0.1%でも低いことを望むでしょう。ここ数年、インデックスファンドを中心にして、信託報酬率の引き下げ競争が行われてきました。最近のインデックスファンドのなかには、信託報酬率が年0.1%台のものも結構あります。

信託報酬率は低ければ低いほど良いのかという点については、いろいろ議論があるところですが、一つ言えるのは、運用会社も受託銀行も営利企業であるということです。会社を維持していくためには、当然のことながらそれに足る報酬を取る必要があります。

おそらく、インデックスファンドで0.1%台という驚異的な低信託報酬率を実現している運用会社は経営規模が相応に大きく、他にもさまざまなタイプの投資信託を設定・運用しているはずです。つまり、低信託報酬率のインデックスファンドは、他ファンドに資金を誘導するための人寄せパンダだと考えることすらできてしまいます。

もちろん、「そんなことは分かっている。だから低信託報酬率のインデックスファンドしか買わない」という人もいらっしゃるでしょう。

でも、この手の低信託報酬率のインデックスファンドばかりがクローズアップされ、相対的に信託報酬率が高いアクティブファンドは悪という間違った認識が常識になった時、運用会社の経営はどうなるでしょうか。いや、その前に運用会社の運用ノウハウを維持することができるでしょうか。運用努力を重ねても信託報酬が全く増えないという事態に陥ったら、おそらく運用会社は優秀な人材を確保できなくなり、運用成績はじり貧になるということも考えられます。

何事にもリーズナブルな水準というものがあり、それは投資信託でも同じだと思います。信託報酬率が低ければ低いほど良いというのは、決して正義ではないのです。

【この記事のポイント】 1. 信託報酬は投資信託を保有している期間中、日割りで徴収されます。 2. 手数料のように別途支払うのではなく、信託財産から支弁されるので、投資家は自分が信託報酬というコストを負担している実感があまりありません。 3. 信託報酬はファンドの運用・管理を行う運用会社、ファンドの資産を管理している受託銀行、販売会社の3者に配分されます。 4. 信託報酬を低くすることが「正義」とは限りません。