投資信託の信託報酬は意識されにくいコスト

投資信託のコストで多くの人が一番意識するのは「購入時手数料」でしょう。なぜなら購入時手数料は、明らかに徴収されていることが分かるからです。

購入時手数料の支払い方法は、投資金額に対して別に購入時手数料を支払う方法と、投資金額の総額に購入時手数料を含めた形で支払う方法の2種類に分かれます。

例えば購入時手数料が2%で投資金額が100万円だとしましょう。投資金額を100万円ぴったりにして手数料を別に払う場合は、100万円の2%ということで総額102万円を払い込むことになります。

一方、投資金額の総額に購入時手数料も含める形で支払う場合は、投資金額が98万392円、購入時手数料は1万9608円になり、購入時手数料を含めた総額が100万円になります。どちらの方法を選ぶにしても、自分自身で購入時手数料を負担していることが明確に分かるわけです。

ところが信託報酬(運用管理費用)は、ファンドの運用資産から日々差し引かれていきますから、受益者からすれば負担しているイメージが湧きにくくなります。

例えば信託報酬率が年2%で、今日の純資産総額が100億円としましょう。信託報酬率は年率ですから、1日あたりの信託報酬率は2/365%になります。つまり1日あたり0.00547%で、今日は54万7000円の信託報酬が100億円のファンドの運用資産から差し引かれるのです。

翌日、ファンドの基準価額が値下がりして、純資産総額が95億円になったとしましょう。すると95億円に対する0.00547%ですから、この日の信託報酬額は51万9650円に目減りします。

純資産総額は組入有価証券の値上がり・値下がり、ファンドへの資金の純流入・純流出によって増減するため、ファンドの運用成績向上は純資産総額を押し上げ、信託報酬額を増やす要因になります。これが運用会社にとっては、運用成績を向上させるうえでのインセンティブになるのです。

このように信託報酬は、自動的に信託財産から日々引き落とされる仕組みになっているため、多くの受益者は自分のファンドの信託財産から信託報酬が支弁されていることを意識していません。

でも、それで良いと思います。詳しくは最後に触れますが、信託報酬に関しては、そういうものが日々、少額ずつ差し引かれているのだという事実だけを知っていれば十分でしょう。