販売会社が受け取る代行手数料の言語道断
もっとも信託報酬は、運用会社の総取りではありません。運用会社と受託銀行(信託銀行)、そして販売会社の三者で分けることになっています。ちなみに販売会社が受け取るのは「(事務)代行手数料」という名目であり、この代行手数料分が信託報酬に含まれて信託財産から引き落とされているのです。
ご存じの方も多いと思いますが、運用会社は販売拠点を持っていません。従って分配金や償還金の支払い、運用報告書の交付など受益者に対する各種サービスを販売会社が代行しているという名目になっています。
ここ数年、信託報酬率の高さに対する批判がさまざまなところから聞こえてきます。確かに受益者側から見れば、少しでもコストは低いほうが良いというのはその通りでしょう。
でも、本当に見るべきなのは信託報酬率全体の高さではありません。最も注目すべきなのは、運用会社が受け取る信託報酬と、販売会社が受け取る代行手数料のバランスです。
信託報酬率の内訳をみると、大半のファンドで受託銀行が受け取る信託報酬率は0.1%程度です。仮に全体の信託報酬率が年1.5%だとすると、受託銀行はこのうち0.1%を受け取り、残りの1.4%を運用会社と販売会社で分けることになります。この両者のバランスは半々、というファンドが大半です。つまり年1.4%を運用会社0.7%、販売会社の代行手数料で0.7%というように分けるのです。
前述のように、代行手数料にはそれを徴収する名目こそあるものの、こう言っては何ですが、単なる事務作業のコストとして、運用会社が受け取る信託報酬と同額を取る理由が分かりません。これは投資信託を、証券会社が自分たちのところに手数料を落とすためにどんどん設定させてきた悪しき時代の名残と言っても良いでしょう。
正直、代行手数料が運用会社の信託報酬と同額のファンドは言語道断ですし、そのようなファンドは買わないほうが良いとあえて強調しておきます。