利益をもたらす不動産なら「相続時精算課税制度」に注目

ご懸念の相続税対策ですが、一つは年間110万円まで贈与税がかからない、「暦年贈与」を活用する方法があります。もう一つは、60歳以上の親から20歳以上の子や孫への贈与なら通算で2500万円まで贈与税がかからない「相続時精算課税制度」を活用する方法があります。

基本的には、暦年贈与の方がメリットは大きいと言われています。相続時精算課税制度を利用する場合、最終的には相続税の対象となり課税をされるからです。そのため、相続税の課税が見込まれる場合にはメリットはあまりないかもしれません。

ただし、相続時精算課税制度のほうが有利になるケースがあります。それは、将来値上がりする財産や、収益を得られる財産を譲渡する場合です。
相続時精算課税制度は、「贈与時」の価額を基準として相続税を計算するため、将来大きく値上がりすることが見込まれる場合は価額の低いうちに譲渡しておいた方がよいわけです。また、アパート経営などをしてその建物を贈与した場合、そこから得られる収益分については相続税が課税されません。

岸田さんの場合は、値上がりの見込まれる資産や不動産があるので、相続時精算課税制度を検討してもよいと思います。

「貢献するお金」も、ふるさと納税などを活用し効率的に使おう

最後に「貢献するお金」について、手軽に利用できる制度としては「ふるさと納税」が挙げられます。節税効果もあり、効果的に使うことができるでしょう。

その他、あまり知られていませんが、叙勲・褒章に「紺綬褒章」という褒章があります。公益のために500万円以上の私財を寄附した者を対象として、各府省等の推薦に基づき審査し、授与するものです。まとまった金額の寄付を考えているなら、社会的貢献と同時に栄誉を得られる可能性があるので、この制度を覚えておいても損はないでしょう。一生に一度、勲章を授かるのも悪くはないものです。

以上、見てきたように、退職金をどのように受け取ればよいのかという問題は、それをどんな目的に使うかによって最適解が異なります。現在の損得だけではなく、先を見据えて、より質の高い生活を目指しましょう。