「17兆円下げた」と「12兆円上げた」が連続して起きた2020年

新型コロナウイルスの感染拡大が相場を騒がせた2020年は、GPIFにとっても「過去最悪」と「過去最高」の運用成績を記録した年だった。

まず2020年1-3月期に、約17兆円の損失を計上した。損失の額は自主運用を始めた2001年度以降、過去最悪の記録だった。コロナショックの影響は安定運用を行うGPIFでも避けられなかったわけだ。

一方で冒頭でも触れたとおり、2020年度4-6月期の運用益は過去最高となる約12兆円だった。過去最悪の損失を計上した1-3月期から急回復したといえる。

その理由は金融緩和による世界的な株高が背景にあるといわれる。ただ、2019年12月末に3.4%だった短期資産の比率がコロナショック時の2020年3月末には6%になっていることから、相場急落のタイミングで一時的に流動性の高い短期資産の比率を増やしたことがうかがえる。しかし基本的には、前述した運用方針を守りながら相場の回復を「待つ」ことで、世界的な株価の上昇にあわせてリターンを得られたといえそうだ。

ここから学べるのは、安定運用を行う世界最大規模の機関投資家であっても、株価の変動によって短期的には損失を出したり、逆に利益を得られたりするということだ。だからこそ特に長期の資産形成では、短期的な相場の上下に一喜一憂せずに「続ける」ことが、大きな下落を乗り越えていくために必要だ。

一般論として「株価は循環する」と言われているが、このたびのコロナショックとその後の経過において、GPIFが短期間で出した損失と利益という結果はその証左といえるだろう。

GPIFの運用方針は「長期・分散」というあくまでも王道の手法だ。世界最大規模の機関投資家といっても限られた特別な運用を実践しているわけではない。しかし結果として2001年度から2020年度(第2四半期まで)にかけての長期収益率は年率でプラス3.09%という成績を挙げている。GPIFの運用手法には、個人投資家にも真似できる部分が大いにある。