ターゲット・デート・ファンドの台頭、2006年の法改正がさらに401(k)の進化を後押し
話を戻しますが、401(k)のラインアップの低手数料化とインデックスファンド化が進んだと同時に、ターゲット・デート・ファンドが主流になったのも非常に大きい要素だと思います。たとえ低手数料の良質インデックスファンド・ラインアップが提供されていても、やはり投資がそもそもピンとこない人には、それを組み合わせてお金をどう割り振って投資するかを自身で考え、決めなくてはいけない……となると二の足を踏むところも多いでしょう(もちろん、アメリカにもそう考える方は多くいました)。
リタイヤするターゲット年を決めて、その年号を選べば、ポートフォリオの組成をすべて自動でやってくれて、その後の経年のリスク調整もやってくれるオールインワン・ソリューションとしてのターゲット・デート・ファンドは、アメリカにおいては投資が初めての人にも、また投資を長らくやってきた人にも、ほとんどの場合ベストチョイスになりつつあります。
これに加えて、2006年の法改正によって、401(k)のデフォルト加入・デフォルト投資が進みました。これは、雇用者がオプト・アウト(デフォルトを拒否)しない限り、年収の一定割合が自動的に401(k)へ拠出され、積み立てられ、デフォルトの投資ファンドで運用される――いわば“半強制”に近いかたちで自動拠出・自動投資されるしくみです。「やったほうがいいだろうけど、なんとなく一歩踏み出せない」人々を力強く後押ししました。このデフォルト投資の投資先は、ほとんどの場合ターゲット・デート・ファンドに設定されています。
アメリカのターゲット・デート・ファンド市場の覇者はバンガード社です。2020年初頭時点ではバンガードは、2位のフィデリティに大きく差を開け、 ターゲット・デート・ファンド市場の$1トリリオン(38%)を占めています。企業および団体の401(k)でバンガード社のファンドプランを利用しているところは多数ですが、それら401(k)に積み立てている人のうち5人に4人が(自分で個別にファンドを組み合わせるのではなく) ターゲット・デート・ファンドを選んでいます。バンガード社によれば、ターゲット・デート・ファンドの利用率上昇により、これまで見られた知識不足による高株式・高リスク投資が75%解消され、投機的な売り買いが減少し、適切なリスクでの長期投資が促進されたと報告しています。