相場変動時よりも「年初」「誕生日」にリバランス

話をリバランス実行のタイミングに戻そう。

相場が大きく動いたからといって、即座にリバランスをしたほうがよいかというと、必ずしもそういうわけではない。第一に、プロの投資家の世界では、相場転換のシグナルの検知など厳密なルールを決めた上でリバランスを実施するが、個人の資産形成でこれを実践するのは極めて困難である。さらに、リバランスというのは、あまり小刻みに行っても効果を得にくいのだ。

以上をまとめると、すでに株式、債券、代替資産など、複数の投資信託を組み合わせて基本ポートフォリオを作っているという場合は、相場の動きに左右される形ではなく、毎年決まった日にリバランスを実施することをお勧めする。年初のほか、誕生日などでもよいだろう。例えば、誕生日に保有する投資信託を確認し、20%程度の利益が出ているファンドがあったらその利益相当分を解約(売却)して、比率の低下したファンドを買い増すといったイメージだ。

とはいえ、リバランスは毎年必ず行わなければいけないというものでもない。特にiDeCoなどで長期の資産形成を行っている場合は、ファンドの確認は年1回、実際にリバランスを行うのは3年に1回程度でも十分である。実際にリバランスを行うかどうかは別として、ひとまず覚えやすい日を「確認日」として設定しておくとよいだろう。

あえて「出遅れ」資産に着目するのもポイント

上昇相場で着目したいもう1つのポイントは、「相対的に出遅れている」または「(価格が)戻り切っていない」資産や地域へ目を向けることだ。今年3月のコロナショックを例にとると、新興国株式やリート(不動産投資信託)が該当する。

相場上昇時はどうしても上昇している資産を追加で購入したくなるが、ここであえて「出遅れている」資産を取り入れれば、先述した基本ポートフォリオの原型を作ることができる。今年3月以降の米国株の上昇は目を見張るものがあるが、長期の資産形成に資するポートフォリオを作りたいなら、グッと我慢して米国株ファンドの追加購入は見送ろう。

また、上昇している資産と相関の低い資産に着目するのもよいだろう。例えば、金(ゴールド)は一般的に株式(とりわけ米国株式)と逆の値動きをする傾向にある。相場全体が「リスクオン」の状態となり、株式市場が好況に沸くと、金の値動きは比較的穏やかになる。金という資産はあくまでも分散投資の1パーツとして保有することが望ましいので、値動きが穏やかなときに取り入れることをお勧めしたい。

ポートフォリオを作る上でより重要なのは、追加的なリターンを狙うことではなく、相場急変時に大きなダメージを受けないためのリスク管理である。値動きの異なる資産を組み合わせることで、保有資産全体のリスクを少しずつ調整していけば、自分に合ったポートフォリオを作っていくことができる。なかなか思うように資産形成ができず、「今年こそは」と思っている方は、ぜひ実践してほしい。