相談者のプロフィールとお金データ

【鈴木あい(仮名)さんプロフィール】 28歳、静岡県在住で一人暮らし。大学院修士課程を卒業後、今の会社に就職。大学院博士課程への進学を希望したものの、弟妹の大学進学と重なり、親の負担を考えて就職を選んだ経緯がある。なお、結婚願望はなく、“おひとり様”で生きていく予定。
【寄せられたお悩み】 「この先、“おひとり様”で生きていくつもりでいますし、子どもの予定もないので、大学院での学び直しを考えています。1年後、遅くても5年以内には大学院の博士課程に入りたいと考えています。 そのための学費、そして私も“アラサー”ですし老後資金の準備もそろそろ……これらのお金の準備はどうすればいいのでしょうか。 また、生命保険に一切入っていないのも気がかかりです」
【お悩みの論点】 ①大学院で学び直す予定でいます。そして、老後の資金作りもそろそろしたい……お金の準備はどうすれば?老後の資産も含め、どのように準備すれば良いでしょうか。 ②生命保険に一切加入していません。万が一のときのケガ・病気を思うと、このままでいいのか心配です。
【資産状況や月々の収支内訳】 金融資産額:140万円 内訳 預貯金:140万円
収支 <収入> ・毎月の手取り収入:18万円  ・手取りの年収:ボーナス約60万円を合わせ、276万円
<支出> 17.5万円(詳細以下)                       

※1……衣類を中心とした雑費。
ちなみに、余ったお金は趣味や臨時出費に使っている。

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学び直しと老後のための資金作りをどう両立するか? ということと、保険に入ってないことを気にされているのですね。鈴木さんはご事情があって、博士課程への進学を断念されたということですが、「人生100年時代」というワードとともに「学び直し」という言葉もよく見かけるようになりました。今後は鈴木さんのようにいったん就職したのち、大学院等で学びたいという方が増えるかもしれませんね。学び直しと老後不安を解消する方法について、アドバイスさせていただきます。

退職する場合、保険に入る意味はある

1人で暮らしていると、自分が働けなくなって収入がなくなったらどうしようと、心配になりますね。入院やケガのための医療保険に入っておくべきか――というご質問に先に回答します。

鈴木さんは、現在お勤めの会社で社会保険に加入されていらっしゃいます。健康保険は、病院に掛かる時に3割負担になるだけではありません。病気やケガで働けなくなり給料が支払われなくなった場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。給与の約3分の2程、最長で1年6カ月支給されます。

ただし、給付金を受け取っている間も社会保険料の支払いは続きます。不足分収入が3分の2になって足りない分は予め貯金や保険で準備する必要があります。

進学を機に退職する場合は、国民健康保険加入となり傷病手当金はありません。よって、その場合は収入をカバー出来る金額が必要になるので、保険も考えると良いでしょう。

万が一、障害を負ってしまった場合も、障害1級・2級に該当した場合、国民年金から障害基礎年金を受け取れます。また、会社員で厚生年金に加入している時に初診日があれば、障害厚生年金を受け取れます。障害厚生年金は、加入期間が300月未満でも、300月加入したと見なし、障害厚生年金を算出します。保険を考える前に、公的保険での保障を把握しておきましょう。

では、本題の学び直しに入っていきましょう。

一にも二にも、「学び直し」費用の確認から始めて

大学入学時は、学費や下宿代を親御さんに払っていただいていたかもしれませんが、今回は全て自分で支払わなければなりませんね。まず、進学予定の大学はどのくらい必要になるか調べておきましょう。

ご参考までに、文部科学省による平成30年度の初年度学生納付金の調査では、私立大学大学院博士前期課程104万円、博士後期課程86万円、専門職学位課程139万円が平均となっています。これは平成30年度の平均で、令和2年度では約75万円~120万円と、大学、研究により異なります。また、学部・修士課程とも異なります。国立大学の場合、年間約54万円(法科は約80万円)になります。

他に入学金、検定料合わせて30万円を見ておきますと、博士課程3年間で私立大学は約260万円~390万円、国立大学は約200万円を想定しておきましょう。

そして、今の会社に在籍しつつ通うことができれば生活費の問題はありませんが、退職しなければならない場合や、時短になる場合、収入をどうするかも問題になります。

鈴木さんは、早くて1年後、遅くても5年以内に学び直しを考えているとのこと。月3万円の貯金×12ヶ月とボーナス60万円で、1年間で96万円、5年後の場合で480万円の資金が準備出来ます。現在の貯金と合わせて1年後は約230万円、5年後は620万円になります。

5年後はともかく、1年後の進学の場合、学費や生活費の不足分をどうするかが問題ですが、大学院生であるから受けられる様々な経済的支援があります。

フェローシップ(博士課程)、ティーチング・アシスタント、リサーチ・アシスタントなどです。授業料の免除や減免、日本学生支援機構の奨学金や大学独自の奨学金の他、地域の企業からの支援がある場合もあります。進学予定の大学でそうした支援の条件や、受けられる金額を調べておきましょう。

老後資金の形成は、学び直しの後から始めても遅くない

老後のための資産形成も大切ですが、現時点では学び直しのための費用を優先でよろしいのではないでしょうか。

鈴木さんは、遅くても5年以内に学び直しを考えていますので、修了するときは8年後の36歳。その後60歳までに24年間あります。老後の資産形成は学び直しの後でも遅くはありません。運用益が非課税になるiDeCoやつみたてNISAを利用して運用しましょう。

iDeCoは老後資金形成のための制度です。毎月一定額を掛け、投資信託や定期預金、保険商品、投資信託で運用します。掛金は全額所得控除、運用益は非課税と税制優遇を受けながら資産形成が出来ます。

一方つみたてNISAは、年間40万円まで最長20年、非課税で運用出来ます。掛金の所得控除はありませんが、いつでも解約出来る魅力があります。つみたてNISAの口座開設は制度改正により、2042年まで延長されます。

どちらも、あらかじめ配分を指定しておき、口座振替等で毎月一定の日に一定の掛金を拠出するため、昼間勤務中の会社員でも簡単に、そして1度設定したら“ほったらかし”で、資産形成が出来ます。

3万円(iDeCo2万3000円、つみたてNISA7000円)を24年間貯めるとすると、元金は864万円ですが、例えば3%で運用すれば1263万になり、5%では1664万円になります(ただし、つみたてNISAの非課税期間以降の課税は考慮していません。iDeCoの口座管理手数料についても考慮していません)。

さらにiDeCoは掛金全額所得控除により、例えば所得税率5%の場合でも翌年の住民税の軽減も考慮され、23,000円×12ヶ月×24年×15%=99万3600円 の税金が軽減されます。

また、iDeCoは60歳以降も会社員として働いている場合、最長65歳まで掛金を拠出することが出来ます(2022年5月の制度改正より)。

ボーナス分は資金の調整用として預金で持っておきます。

学び直しが遅くなるなら、つみたてNISAを厚くしておこう

1~5年後の学び直しを希望されている鈴木さんですが、仮に事情が変わって、鈴木さんの進学が10年後になった場合の話もしておきましょう。その場合、修了するのは41歳になります。

学び直しのための費用は十分出来ますが、反対に老後資金が寂しくなります。ボーナス60万円を学費用に残し、月々2万円をつみたてNISAで、月々1万円をiDeCoというような割合で、早めに運用を始めておきましょう。

つみたてNISAは、いつでも現金化する事が出来ます。不測の事態に対応するためにも、つみたてNISAの割合を多くしておきます。

学び直しの間に無収入になる場合、国民年金の免除申請をすることが考えられます。免除の場合はiDeCoの加入資格がないため掛金を拠出できなくなることも頭に入れておいてください。

学び直しの後、仕事を再開し免除がなくなれば、iDeCoの掛金を拠出も再開できます。この辺りからiDeCoの割合を多くすると良いでしょう。

iDeCoは掛金全額所得控除です。自分が老後使うために老後口座に移しただけで掛金が所得控除になるため、たくさん掛けたいところですが、60歳まで引き出せません。もし、途中で拠出がつらい時は、最低金額の5000円まで減額して続けると加入期間を延ばすことが出来ます。拠出を停止する事もできますが、その期間は加入期間には入りません。
 

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今は「結婚しない」と決められている鈴木さんですが、この先ずっとそうなのかは分かりません。結婚することになるかもしれませんし、お子さんを持たれるかもしれません。長い人生、何があるか分かりません。臨機応変に対応できるよう、余裕を持って計画すると良いですね。夢が叶うことを応援しています。

以下、鈴木さんや“学び直し”を考える方に役立ちそうなリンクをまとめました。ご参考になさってください。

●文部科学省 大学院学生に対する主な経済的支援(フェローシップ、奨学金など) https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1335469.htm ●文部科学省 私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00001.htm ●文部科学省 国立大学の授業料について https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/__icsFiles/afieldfile/2016/03/04/1367834_01_1.pdf