積立期間が短い人はハイリスク商品を避けよう
iDeCoに加入する際、気を付けたいのが運用先の選定です。積立期間が数年に限定されるなら、リスクを取って大きなリターンを狙うタイプの金融商品は避けるのが賢明でしょう。
積立投資が失敗に終わる典型例が“下げ相場”です。長い相場の歴史を振り返っても滅多にないことですが、運用期間の大半で株式市場が下がり続け、積立残高が拠出総額を大きく下回ってしまうことも絶対にないとは言えません。
すでに所得控除で節税の恩恵を受けているわけですから、運用は債券主体の投資信託などで手堅く行うのが現実的ではないでしょうか。
長期の積立が可能なつみたてNISAと使い分ける
運用期間が短いのがiDeCoの弱点だとすれば、それを補完できる有用な制度もあります。つみたてNISA(少額投資非課税制度)です。
つみたてNISAを利用すると、毎年の限度額(上限40万円)までの積立投資による利益を最長20年間、非課税にすることができます。iDeCo同様、運用期間中は20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)の課税が免除される形です。
NISAやつみたてNISAの制度は2024年に大きな改正が予定されていますが、現行のつみたてNISAでも2037年いっぱいまで積立投資が可能です(2037年中に購入した投資信託は、2056年まで先の非課税メリットを維持したまま保有できます)。2020年内に始めれば17年以上積立ができるので、リスクを取った積立投資はこちらで行うなど、iDeCoと使い分けてもいいかもしれません。
つみたてNISAの場合、「投資ビギナー向け」という制度の性格上、対象となるのは金融庁が定めた基準をクリアした商品のみで、2020年10月16日時点で投資信託やETF(上場投資信託)が計184本登録されています(金融庁「つみたてNISA対象商品届出一覧(運用会社別)」)。インデックスファンドなど低リスクで手数料を抑えた投資信託が主体ですが、中には中小型株に投資するグロース型や、為替ヘッジを行わない積極運用の投信も含まれます。
60歳を待たずに任意のタイミングで換金できるのは、iDeCoにないメリットです。半面、iDeCoのように掛け金を所得から控除することはできず、節税効果は運用時に限定されます。
「“退職金デビュー”はNG! 50代から始めたい「投資の筋トレ」とは?」の回で、50代の今から「投資の筋トレ」--少額での投信積立を始めておくことが大切とお話ししましたが、その際にiDeCoやつみたてNISAを使う手もあるでしょう。運用益が非課税で再投資されることにより、長期的な視点から効率のいい資産形成が可能になります。