50代は“年金逃げ切り世代”ではない――親世代の悠々自適を目指すなら準備が必要
昨年、「公的年金だけでは老後資金が2000万円足りない」問題がメディアなどで大きく取り上げられた際、自分の老後に強い危機感を抱いたのは主として20~30代の若い世代でした。実際、NISAやつみたてNISAも、大きく口座数を伸ばしているのは若年層です。
これに対し、50代には比較的リタイア後の家計を楽観視されている方が多いように感じます。背景には、ご自分の親世代が年金で悠々自適の暮らしを送っていることがあるのではないでしょうか。
しかし、「親が安泰だから、自分も大丈夫」とたかをくくっていると、定年後に足をすくわれることにもなりかねません。なぜなら、親世代と今の50代では、2つの大きな違いがあるからです。
1つは、親世代は高水準の年金を受け取っていること。そしてもう1つは、親世代はバブル時代に高金利の恩恵を享受できたことです。
二十数年後の年金支給額は、現役世代の収入の約半分まで減ってしまう
前者については、「所得代替率」を使ってご説明したいと思います。
所得代替率とは、年金の支給額が現役世代の収入のどれくらいの水準かを示すもの。「厚生年金に40年間加入してきたサラリーマンの夫と専業主婦の妻」という厚生労働省が設定した“モデル世帯”の年金額を、現役世代の男性サラリーマンの平均収入と比べると、1989年は約69%でしたが、2019年には61.7%まで低下しました。さらに昨年の財政検証(5年に1度行われる年金財政の点検)では、二十数年後には50%を切る可能性が指摘されています。
この水準を今のご自分の家計に当てはめたとき、「現役時代の収入の約7割の年金がもらえるなら、夫婦2人、余裕を持って暮らしていける」と考える方が多いのではないでしょうか。確かにその頃には、子どもの教育費や住宅ローンからも解放されているはずです。
一方で、所得代替率が一気に50%近くまで低下すると、少々不安になりませんか? 現状の61.7%ですら、前述のように「年金だけでは老後資金が2000万円足りない」わけですから、よほど企業年金制度が充実した会社にお勤めでもない限りは、相応の自助努力が必要になります。