内閣府は2020年9月8日に、直近となる4~6月期の国内総生産(GDP)が前期比で年率28.1%縮小したと発表した。現行基準での集計が開始された1980年以降、最悪の落ち込みだという。
一方で、株価は異様とも思えるほど元気だ。特に緊急事態宣言が解除されて以降、経済活動再開に期待する投資家の心理を表すように、上昇を続けている。
また、経済活動が縮小する中でも、投資を始める人も増えている。例えば、つみたてNISAの口座開設数が順調に伸びていて、2020年3月末時点の口座数は114万口座。前年12月末と比べて約19万口座(約20%増)も増えた。四半期での口座の増加数では、過去最高だ。
このようにコロナ禍において景気や企業業績が悪い状況でも、株式市場へと資金が流れ込み、株価が上がる現象を「金融相場」と呼ぶ。
経済停滞でも株式相場が上昇する「金融相場」
では、景気の悪化とは裏腹に、株価が上がる理由はそもそも何なのか、改めて考えてみたい。
経済の成長にともなって企業の利益が増え、その結果、株式の価値が高まることで株価上昇につながるという見方が一般的かもしれない。逆に経済が衰退すると、企業の利益が減るとともに株式の価値も低下し、株価の下落につながる。ただ、この見方だと今回のコロナ禍における経済活動の低迷は、企業の業績悪化につながるわけだから、本来であれば株価も下落が続くはずだ。
しかし、株価が上昇する要因はそれ以外にもある。例えば、連載1回目の「ETF買い」の記事でも触れたが、日本政府が財政政策を通じて経済支援の姿勢を示したのはもちろん、日本銀行(日銀)のETF買いによって投資家の投資意欲を高めたことも株価の上昇要因と言われる。
政府の経済支援や日銀のETF買いによる期待感から、株式市場に流れ込むお金の量さえ増えれば、実体経済が停滞していても株式相場は上昇を続けることができる。これが、冒頭でも触れた「金融相場」だといえる。