「適温相場」「流動性相場」と金融相場はどう違う?
相場環境を表す言葉には、金融相場以外にも「適温相場」や「流動性相場」もあることは知っておきたい。
適温相場は景気底上げのために実施される金融緩和だけでなく、「緩やかな景気回復」も共存することで相場が過熱し過ぎず、かといって閑散としているわけでもない、ちょうど良い加減にある状態を指す。
適温相場ではさらなる景気回復によって強気相場へ移行すると、金融緩和とは逆に、中央銀行が金融引き締めに舵を切ることになる。とはいえ国内においては現状、日銀は安倍晋三首相の辞任後も、大規模な金融緩和を当面継続する見通しだという。
流動性相場は過度な金融緩和などによって必要以上に世の中に出回ったお金をきっかけとして、生じた相場を指す。「カネ余り相場」とも呼ばれる。コロナショックの際に各国が金融緩和策を取ることで市場に余剰な資金が供給された結果、実体経済とは乖離した株価の上昇が起こった状態もまた、流動性相場と言えるだろう。
ここで、流動性相場と金融相場の違いがわかりづらく感じる方もいるかもしれない。
違いとしては、流動性相場が世の中に出回っている余剰資金に注目するのに対して、金融相場は株価の動きに注目している。つまり現在のコロナショック後の相場は、流動性相場でもあり、なおかつ金融相場でもあると言えそうだ。
相場の乱高下だけでなく今は収入の変動も大きい
金融相場の現在は、株式市場の動きだけを見ると景気が良いような錯覚を覚える。しかし現実には冒頭でも触れた通り、GDPは最悪の落ち込みを記録しており、収入が減少するなどのニュースも耳にする。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、7月の実質賃金は前年同月比で1.6%減と、5カ月連続で低下しているというデータもある。
一方で、1人につき10万円が支給された定額給付金や、持続化給付金などまとまった資金が入ってくる時期でもある。つまり、コロナ禍の株価の乱高下と同様に、収入も大きく変動している家庭が多いのではないか。
本来であれば、収入が不安定だからこそ、まとまったお金が入ったらしっかりと貯蓄を行いたい。しかし働いて得た以外のお金が急に入ってくると、どうしても消費を増やしたくなるものだ。
行動経済学には「メンタル・アカウンティング(心の会計)」といって、お金を考えるときに理論や理性よりも感情のほうが強く出てしまうという理論がある。例えば働いて得た収入は慎重に使うかもしれないが、今回のような給付金などで急に入ってきたお金は「あぶく銭」と考えて一気に使ってしまうような行動を指す。
特に相場の乱高下だけではなく、収入も変動しやすい今だからこそ、お金との向き合い方に感情の影響が色濃く出てくる可能性は高い。
そのため資産形成でも、感情に左右されにくい仕組みを取り入れながら、耐える時期かもしれない。例えば「収入から先に資産形成用の資金を自動天引きした残りで生活を行う」などの方法が挙げられる。
収入が上下しやすい今だからこそ「自動積立」などで投資を仕組み化しながら、将来に向けた備えを整えていきたい。