販売会社を選ぶ基準となる客観的なFD評価

格付投資情報センター(R&I)では2018年から「R&I顧客本位の投信販売会社評価」(以下、「R&I投信FD評価」)を実施しており、2020年6月末時点では23社の評価を公表している。当評価は、投資信託を販売する銀行や証券会社などがFDにいかに取り組み、実践しているかを評価するもので、5段階の符号(SS、S、A、B、C)で表している(SとAは上位評価に近いものにプラスの表示をすることがある)。どの販売会社がFDに高いレベルで取り組んでいるのか、投資信託購入の際に販売会社を選ぶ基準としてぜひ利用してもらいたい。

※グループごとに50音順。評価の詳細は専用サイトを参照

金融庁は2017年3月に公表した「取組み」(先述)において、FDの定着に向けて4つの方策を示している。具体的には、金融事業者に対してその定着度合いを客観的に公表すること、当局がモニタリングを行うことにより取り組みを金融事業者に働きかけることのほか、個人投資家が主体的に行動できるような方策が示されている。

そうした中、個人投資家の主体的な行動を補う仕組みとして、“第三者的な主体による金融事業者の業務運営の評価”が明記されており、中立的な第三者による金融機関の取り組みの「見える化」が進むことが期待されている。R&Iは日本経済新聞社グループが過半数の株式を保有する中立・公正な立場であるとともに、これまで長年にわたり投信を含むファンドの定量・定性評価を手掛けてきた経験に基づきこの評価を開始した。

R&Iから評価に必要となる資料(データを含む)を投信販売会社に依頼し、提出された資料を当社アナリストが分析した後に、インタビューを実施している。「R&I投信FD評価」の主な評価の視点は以下に示した通りだが、具体的には25項目に細分化して項目ごとに評価を行っている。

①経営陣のリーダーシップを含むFD推進体制や、取組方針、取組状況、成果指標(KPI)の内容や見直しの実施状況など
②従業員の専門性向上やFDを企業文化として定着させるための施策など
③販売方針、顧客ニーズや顧客特性に沿った商品を提案するための仕組みやサポート体制、顧客フォロー、販売実績など
④新規に販売する投信の選定や、取扱っている投信の運用実績、運用会社の運用体制などの確認に関する基準や体制など
⑤FD実践のための従業員に対する施策や業績評価体系など

この評価を通じ、投信販売会社がより良い金融商品やサービスの提供を競い合うようになり、家計金融資産のうち1000兆円を占める現預金の投信へのシフトによって個人投資家の安定的な資産形成に寄与することが可能ではないかと考えている。