格差は投資行動にも波及……その要因の1つは知識の差

この哀しい格差は生活のあらゆる側面で連鎖的に存在しますが、資産運用も例外ではありません。

格差の原因はあまりに複雑で簡単に説明のつくことではないかもしれませんが、1つ大きな要素は“知識の差”のように思います。資産運用は知っていれば、誰だってある程度はできることなのに、知識がないために全く考えもつかない、あるいは適切な判断ができず、なかなかポジティブな循環に入っていけない、ということがあるように感じるのです。そしてこの格差は単に白黒という二極化ではなくて、それをつなぐ直線上にあらゆるグラデーションのグレーが存在しているように感じます。

さらに話を資産運用にフォーカスしていきましょう。所得には大きく分けて2つのタイプがあります。1つは勤労所得で労働して得る所得で、もう1つは財産所得といい資産がお金を生んで生じる所得です。ちなみに、これには日米で大きな差があり、日本では勤労所得と財産所得の比率が8:1で、アメリカはこれが3:1となっています。頑張って働いて100万円稼ぐ間、日本では資産が12.5万円しか利回りを生んでくれませんが、アメリカでは33.3万円を生むことになります。

ただこれは全日本、全米平均であり、たとえアメリカであっても先ほどの“paycheck to paycheck”で生きる人々の場合は、100万円に対し0円の財産所得です。

アメリカの株式投資に対する格差は甚だしく、富裕者トップ10%が全米株式の81%を保有し、中間層(ボトム20%からトップ20%までにあたる中間の60%)、言い換えれば「普通の人々」が所有している株式は全米市場の8%以下というデータもあります。給与所得が大きければ余剰金も大きく、ますます投資がしやすくなり、市場成長による運用益、つまり財産収入も大きくなる一方で、給与所得が少なく投資など思いもつかない人は、一生財産所得を享受することなく働き続けるしかないという図が見えてきます。