なぜSCは日証金を狙ったのか——小林体制からの継続性
日証金は2012年6月27日、小林英三氏を新社長に選任した。小林氏は1972年に東京大学経済学部を卒業して日本銀行に入行し、2002年に同行理事、2010年から日証金専務を務めた人物であり、前任の増渕稔社長はこの人事にあわせて会長に就いている(出典:日本経済新聞2012年5月14日付)。代表執行役社長はその後、同じく日銀出身の櫛田誠希氏に引き継がれた。2022年11月時点でSCは日証金株式の約5.0%を保有し、1950年の上場以来、歴代社長10人全員が日本銀行の理事経験者であるという構図をESGの「S(社会)」「G(ガバナンス)」の課題として提起した。
SCは経済指標の議論も並行させた。日証金は第7次中期経営計画のもとで2025年度までにROE5%(株主資本コストは4%台半ば)を目標とし、2022年度実績はROE4.36%だったと説明していた。人事構造への異議申し立てと資本効率への異議申し立てが、同じ提案の中に併存している点が大きな特徴である。
会長職「廃止提案」と、否決後もやまない書簡
第2幕の核心は執行役会長制度の廃止提案だった。SCは、社長退任後に執行役会長へ就任した小林英三氏について、果たすべき役割の説明が十分でないと指摘。日証金は会長が社外ネットワークの維持や内部統制の総覧を担うと反論した。
なお、東証出身の社外取締役・飯村修也氏は2023年6月に日証金取締役を退任している。なお、SCは自社の書簡でその事実に触れ、飯村氏は社外取締役として監査委員会委員長を務めていたとした上で、東証出身者の受け入れは同氏の退任をもって解消したと認識していたと述べている。
否決という結果は、両者の関係の終わりを意味しなかった。日証金は2023年11月6日、「当社が目指す経営の長期的展望」を公表した。同文書によれば、2023年度第2四半期決算を踏まえた業績試算の結果、2025年度までのROE5%目標を想定より2年前倒しで達成する見通しとなったことを受け、経営の長期的な方向性を整理する形で、ROEについて8%の水準を意識しながら向上に取り組むこと、PBRについて1倍超の市場評価の定着を目指すことが示された。あわせて第7次中期経営計画のROE目標も、「安定的に5%を上回る水準を維持するとともに、さらなる向上を目指す」へと修正された。
この公表の翌日にあたる11月7日、SCは代表執行役社長の櫛田誠希氏宛に書簡を送付し、日証金が同年5月30日付でSCとは対話しない旨を公表して以降、面談を拒否されていると述べた上で、なお質問事項を伝えている。SCは、ROE8%について長期展望では目標ではなく「意識する」という表現にとどまっている点や、達成時期が示されていない点を指摘し、この文書が櫛田氏の社長在任中に策定・公表された経緯の説明を求めた。あわせて、東証出身者である静正樹氏が日証金の「シニアアドバイザー」という役職に就いていることが判明したとして、その待遇や就任経緯の説明も求めている。
また、会計処理を巡る対立も並行して起きていた。SCは有価証券売却益の計上区分を問題視し提訴請求を行ったが、日証金の監査委員会は全員一致の意見として、有価証券運用は主たる営業活動の一環であり営業損益への計上は妥当だと判断したとしている。

