個人投資家が事業売却の開示を長い目で読み、価値の移転先を見抜くために必要なことは何か――。東芝の2025年度決算は当期純損益1兆9,673億円と過去最高を達成したが、うち2兆2,770億円はキオクシアホールディングス株の売却・評価益等だった。譲渡価額と並んで「売った先にいくら残すか」を確認する視点が、事業切り離しの開示を読む手がかりになる。
株価10倍からの急落、評価損益が揺さぶる業績
東芝の過去最高益は、本業ではなく保有株から生じた損益が水準を決めた。
2兆2,770億円という「持分から生じた損益」
理由は金額の比率にある。営業損益3,008億円に対し、キオクシア関連損益はその約7.6倍にあたる。売上高は3兆7,091億円、売上高営業利益率は8.1%で、年度決算として過去最高であった。
東芝は当期純損益の増加要因として、主要事業の堅調に加えキオクシア株式の売却・評価益等を挙げている。実際に売却した分と、保有を続けている分の評価が合算された表記である。東芝は2026年7月15日時点で15.10%を保有しており、この保有分は時価の変動を通じて期間損益に反映される。
キオクシア株は2026年1月6日の年初来安値1万945円から、6月22日には年初来高値となる11万2,700円を付けた。その後、7月29日には3万8,380円まで下げ、第1四半期決算発表を挟んだ8月4日終値は5万2,090円であった。約7カ月の間に、同一の持分が期間によって逆方向の損益を生む構造が繰り返されている。

