なぜエフィッシモと3Dは東芝を狙ったのか

世界的な投資会社であるエフィッシモと3Dインベストメント(以下、3D)が論点としたのは、業績ではなく会社の意思決定の手続きだった。

背景には2017年の資本構成の変化がある。東芝は2017年3月末に債務超過となり、その年度の当期純損失は9,657億円だった。同年9月、メモリ事業を2兆円で譲渡すると決定し、同時に3,505億円を再出資すると公表した。同年11月には約6,000億円の第三者割当増資を決議し、60の海外ファンドが引き受けた。発行した新株は既存株式の約54%にあたる。

最大の引受先はエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが運用するファンドで、3Dインベストメント・パートナーズも引受先に含まれる。エフィッシモは増資前の2017年3月31日時点で9.84%を保有していた。

エフィッシモは2020年7月の定時株主総会について第三者委員会による調査を東芝に要請。結果、会社法に基づき選任された調査者により、公正に運営されたとはいえないと結論づけられた。エフィッシモは2021年6月17日の声明で、ガバナンスの抜本的な改善を求めている。3Dは2022年1月6日に臨時株主総会の招集を請求し、東芝が公表した3社分割案について、非公開化を含む他の選択肢の検討が十分でないと主張した。東芝側は、分割案は取締役会が設置した戦略委員会の推奨に基づくものだと説明している。

要求は資本効率ではなく手続きに向けられた。増資によって形成された株主構成が、その論点を成立させている。つまり2017年の増資でエフィッシモや3Dのようなアクティビストが大株主となり、経営陣に手続きの妥当性を問える発言力を握ったということだ。

レバレッジローン借り換えという「売却益の帰属先」

レバレッジローン借り換えという「売却益の帰属先」
 
出所:東芝提出 変更報告書、2026年2月19日〜7月23日提出よりFinasee編集部作成
 

東芝のキオクシア株売却は単発の事象ではなく、報告書をまたいで継続している。

2026年7月23日提出分※は、5月11日時点の16.10%から7月15日時点で15.10%への低下を示す。売却は6月22日から7月15日にかけて市場内で4回に分けて行われた。保有目的は同報告書に「キオクシアグループの企業価値の向上」と記載されている。

※報告義務発生日2026年7月15日

ベインキャピタル関連の特別目的会社も並行して比率を下げている。2025年11月26日時点の44.33%から、2026年6月11日時点で14.17%となった。

売却益の使途は東芝が開示している。同社は非公開化時に締結したレバレッジローンについて、より条件の良い銀行ローンへの借り換えを2026年3月末に実施した。理由として、本業の収益力の向上に加え、キオクシア株式等の売却益でキャッシュ・フローが改善し借入金の返済が進展したことを挙げている。

この借入金は、2023年の非公開化を支えたものである。TBJH合同会社は同年、1株4,620円で東芝株を買い付けた。増資を引き受けたファンドも、招集請求を行った株主も、市場で取得した個人株主も、退出価格は同一である。

東芝が持分を減らす一方で、その持分が生む利益は拡大している。キオクシアが2026年7月31日に公表した2027年3月期第1四半期の親会社の所有者に帰属する四半期利益は8,422億円(前年同期183億円)で、3カ月間の利益が前期通期の5,545億円を上回った。

同日、キオクシアは上限3,000万株・8,000億円の自己株式取得枠の設定(取得期間2026年8月3日〜10月30日、自己株式を除く発行済株式総数の最大5.5%)と、1株を3株とする株式分割(効力発生日2026年10月1日)を公表している。本記事の株価は分割前の水準である。自己株式の取得や株式分割は残る株主の持分割合や1株当たり指標に影響し得る資本政策であり、東芝の売却と並行して比率が動く要因となる。