「やったらプラス」より「やらないとマイナス」、発想や伝え方を工夫
メインテーマである、「若者を長期分散投資にいざなうための法律案」を考えるディスカッションに移ると、各班では学校やアルバイト先といった身近な場での経験を基に活発な話し合いが展開された。ある班からは、「幼少期など早い段階から投資教育を始めるべきではないか」という意見が出た一方で、「早すぎると刷り込みのようになるのでは」という慎重論も挙がった。
また、若者に働きかける伝え方の工夫も論点となった。ある学生は、「やればプラスになる、という肯定的なアプローチより、やらないとマイナスになる、と伝える方が危機感から行動につながるのではないか」と提案。「伝え方の工夫は、教育や政策設計において重要な視点だ」と森戸教授も応じた。
ほかにも、企業の新入社員向け説明会に資産形成教育を組み込み、実施した企業にはインセンティブを与えるという案や、投資を当たり前のことと感じられる“メインストリーム感”をどう醸成するかといった論点も共有された。
なお公平性の観点から、「国が主導するなら、大学生など一部の層に限定せず、一律に適用されるべきだ」という指摘もなされた。公平性、実効性、既存制度との接続といった多角的な視点から議論が深まり、学生たちは多様な意見に真剣に耳を傾けていた。講義の締めくくりにあたり、森戸教授はファイナンシャル・ウェルビーイングの考え方に触れ、経済的な観点から各自が多様な幸せを実現し、自律的かつ持続可能な生活を送れる社会を作っていく重要性を挙げた。
続けて小泉社長も、「皆さんのように若い時期から使える『時間』は最大の資産。多忙な中、少しでもお金や投資について考える時間も持ってほしい」と学生に呼びかけた。
なお、同プロジェクトでは昨年も同じ4大学で講義を実施しており、受講後のアンケートにおいて意識の変化が確認されている。「投資に対する興味が増した」「投資に対する理解が深まった」「投資を開始する必要性を感じた」など多くの学生が興味や理解の深化を実感し、約4割が投資の必要性を感じたとの結果が得られたという。
自由記述では、「老後資金はまだ先の話だと思っていた。準備をすることに早いということはないのだと感じた」「年金にたよれなくなる可能性がある以上、自分で増やしていかなければならない」「老後資金を増やすことは、経済再生や自分の人生設計の具体化につながる」などの回答があり、講義が単なる知識提供にとどまらず、学生が自ら考え始めるきっかけとなっていることがうかがえる。
制度を理解し、自ら考えることの重要性が共有された今回の講義。プロジェクトでは今後、学生たちが夏にかけて法律案の作成に取り組んでいく。老後の資産形成は、若者にとっても遠い将来の話ではなく、現実問題として向き合うべき課題になりつつある。こうした取り組みの価値は今後さらに増していくだろう。
