葉月が決めた返済のかたち

しばらく黙ったあと、葉月が顔を上げた。

「返済、月1万なら続けられると思う。遊ぶ回数減らせば、たぶん1万5000円もいけるけど、最初からきつくしてまた払えなくなったら嫌だから……まず1万で、余裕のある月は多めに返すみたいな感じにしようかな」

郁美は葉月の説明を聞いて、表情をゆるめた。

「じゃあ、そのやり方でいこう。自分で決めたなら守りなさいね」

「守るよ。それにしばらくはカードも使わない。返済が終わるまでは現金にする」

「そっか。もしまた使うときは、月いくらまでか上限を決めたほうがいいよ。あと、学校関連で大きい出費があるときは言ってね。まだ学生なんだし、そういうのはママが出すから」

「分かった。今度からそうする」

郁美は小さくうなずいた。

正直、葉月にクレジットカードを持たせることに不安がないと言えば嘘になる。だが、さすがに解約させるのはやりすぎに違いないし、カードを預かるのもやや過保護な気がする。結局は、失敗しながらも本人が変わっていく様子を見守るしかないのだろう。

「立て替えるのは今回だけだからね」

「……うん。ほんとにありがとうママ」

母娘の間に沈黙が流れた。

ややあって郁美はソファから立ち上がった。

「ごはん食べる?」

「うん、食べる。お腹空いて死にそう」

キッチンで、「ちょっと待ってね」と鍋を火にかけた郁美の背に向かって葉月が言った。

「ねえママ。私、家計簿つけ始めよっかな」

「いいんじゃない」

「今、アプリダウンロードした」

「3日で飽きないでよ」

「飽きないよ……たぶん」

葉月が少しだけ笑い、郁美もつられて口元をゆるめた。ローテーブルの上には、督促状の白い紙の脇に、書き込まれたばかりのメモ帳が重なっている。鍋から立ち上り始めた湯気が、静かな部屋の中にゆっくりと広がっていった。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。