膨らんだ出費と消えたバイト代

「バイトしてるし、次の給料が入ったら払えると思ってたの。けど、課題で材料を買ったり、みんなでごはんに行ったり、美容院とか服とか、ちょこちょこ重なって……」

「そういうの、毎回全部カードで払ってたの?」

「……うん」

郁美は軽い頭痛を覚えた。

「請求が来ても、来月払えばいいって思ってたの」

「でも払えなかったんだよね」

「……うん。気づいたらバイト代より使った金額のほうが多くなってた。カードだと使ってる感じがしなくて、つい……ほんとに、こんなことになると思ってなかったの」

そう言うと葉月は両手を膝の上で握りしめ、視線を落として黙り込んだ。

しばらくのあいだ、リビングには冷蔵庫の低い音だけが流れた。郁美はすぐには口を開かず、次に何を言うべきかを考えていた。ここで感情のままに叱りつけても意味はない。

やがて郁美は督促状を手に取り、あらためて葉月のほうへ向き直った。

「葉月、これさ、あとで払えばいいじゃんって思ってない?」

膝の上で指を組んだまま、うつむいていた葉月が顔を上げる。

「え、でも、払えば終わりでしょ」

「そう思ってるのがまずいの。支払いが遅れたって記録は残ることがあるし、何度もやれば、この先の信用に関わるの」

「信用って?」

「分割払いとか、ローンとか、今後1人暮らしで何か契約するときとか。いろんな審査が通りにくくなることだってあるの。約束どおりにお金を払えない人だって判断されるから」

「……そんなに?」

「そんなに、なの。今すぐ全部だめになるって話じゃないよ。でも、こういうのを甘く見てると、自分で自分の首を絞めることになるの」

葉月の肩がわずかにこわばった。

「別に……踏み倒そうとか思ってたわけじゃないよ」

「もちろん分かってるよ。ママはね。でも、世間にはそうは思われちゃうってこと」