<前編のあらすじ>

正紀さんは、長男の裕翔さんの問題行動に悩んでいた。専門学校に通っていたことから度々生活費をせびられたり、ギャンブルで作った借金の穴埋めをさせられたりしたからだ。

そのため、裕翔さんが更生することを願って、遺言書にある条件をつけた。それが「裕翔さんが正紀さんに借りたお金400万円の未返済分は、従妹の唯さんに相続させる」という文言。

ただ裕翔さんはその後立ち直り、父・正紀さんへの借金をきれいに返済。ただ、手渡しで返済し、領収書もなかったので、返済した証拠がなかった。

一方、遺言書の条件は変更されないまま、父・正紀さんが亡くなってしまう……。

●前編:【「このままでは一生お金にだらしないまま」ギャンブルで400万の借金を作った長男に父親がつけた「遺言書の条件」】

借金は返済したはずなのに…

正紀さんの死後、遺言を作成した私も立ち合い、遺言書を開いた。

そこにははっきりと、「未返済分の相当額は唯に相続させる」という、あの頃に書かれた文言があった。

裕翔さんが借金を完済したという事実を知らない唯さんからすれば、この文面を見て、自分に400万円分の相続権があると考えるのは自然だ。

一方で、裕翔さんからすれば、すでに返済は完了している。にもかかわらず、「返済していないこと」を前提とした遺言書の文言によって、自分がなお不誠実な人間であるかのように扱われ、挙句の果てに本来の相続分まで奪われることになる。

裕翔さんが納得できようはずもない。その後の争いは起こるべくして起こったといってもいい。