「遺言書の見直し」が必要だった
さて、諸兄に知っていただきたいのは、今回の遺言書を巡るトラブルは決して他人事ではないということだ。
今回の事例とまったく同じではなくとも、遺言書に条件が付けられていたという話を見聞きした方は多いだろう。ただ、こういった条件付きの遺言書は、相続時に高確率で相続争いが起こってしまう。
とはいえ、条件付きでの遺言書自体が悪いわけではない。
重要なのは、数年も経てば状況や人間関係は一変する可能性があると理解しておくことだ。
その際に遺言書だけが過去のまま残ってしまうと争いの火種となってしまうわけだ。
だからこそ、遺言書の条件や評価が今も妥当なのか、作成後も見直していく必要があるのだ。
今回のようにお金の返済が条件になっていた場合、返済時に領収書を作る、手渡しでなく銀行振込にして履歴を残すなど、第三者が見てすぐに「なるほど、事情は変わっていたのだな」と分かる証拠を残すことも必要だった。
「条件付き遺言書」には要注意
その後、裕翔さんと唯さんは疎遠になってしまった。美子さんとも少し壁ができたようで以前のような交流はなくなってしまったという。
先日、裕翔さんは私に「申し訳ないんだけど、遺言書なんてなかった方がよかったかもしれない……。妻と唯との関係も悪化したし……」と話をしてくれた。
遺言書は確かに相続対策になる。しかし、安易に条件を付けたり、状況に応じた書き換えを怠ると親族関係を逆に壊すものとなりかねない。
繰り返すが遺言書に条件は可能な限りつけるべきではない。仮につけたとしたら頻繁なアップデートをするべきだ。
読者諸兄にはそのことを肝に銘じていただきたい。正紀さんのように、死後に親族関係にわだかまりを作ってしまわないためにも。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
