衝撃的な現実を目の当たりに
仕事帰りの人々が、夕方の電車に無言で揺られている。ひかりは吊り革につかまりながら、食い入るようにスマホの画面を見ていた。
検索ワードは「整形 丸顔」。一覧が写真つきで並ぶ。開いた記事の1枚目に、頬から口元にかけて青紫の内出血が残った顔が出た。術後3日。説明書きには「腫れで口が開けにくい」とある。
(ダウンタイムって、こんなふうになるんだ……)
ボトックス注射、クマ取り、小鼻縮小、脂肪吸引。いくつもの美容整形のビフォーアフターと体験談を読み進め、やがてひかりは画面を閉じた。
「……無理だ」
誰にも聞こえない呟きが漏れる。
ここ最近、自分を磨くことに夢中になっていたのは否定できない。だがそれは前提となる日常生活があってこその悦びだ。
ひかりには、あの体験談の投稿者たちのような熱量はない。痛みや失敗のリスクに対する覚悟がないのだ。
(ある意味、幸せなことなのかも)
ドアが開き、冷たい外気がふっと流れ込む。ひかりは背筋を伸ばして駅のホームに降り立った。
ひかりが出した答えとは
週末の朝、宅配の箱が玄関に届いた。
カッターを入れ、注文したパックと小さな日焼け止めを取り出す。
高額な機器のページを開いた履歴を消し、予約サイトのブックマークも外した。決めた以上、もう戻らない。続けるのは、保湿と日焼け止めだけ。
スマホに依子からメッセージが届いていた。ひかりはゆっくりと文字を打ち込んでいく。
「依子、ごめん。やっぱり韓国はしばらくやめとく。美容旅行は楽しかったけど、私はほどほどでいいや」
「了解。ひかりのペースでいいよ。また今度、ごはんだけでも行こう」
鏡の中の自分は決して完璧ではない。しかし、今はそれが自分らしいと思える。窓の外から新しい風が吹き込み、白いレースカーテンを揺らしていた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
