日課となった入念なケアの日々
スマホのアラームが鳴るより早く目を覚ましたひかりは、スキンケアを手早く済ませ、念入りに日焼け止めを塗ってから、化粧を施す。
肌を褒められて以来、今までとは比べ物にならないほど鏡と向き合うようになった。観察していると、実にさまざまなことが気になり始める。笑うたび目尻にできる小じわや、丸い輪郭、口角が下がって見えること。自ら進んで美容施術を受けるようになってからは特に、日焼け対策を始めとしたホームケアは半ば義務のようになっていたが、そうはいっても輪郭などはどうにもならず、すぐに効果を実感したいなら美容整形に手を出す他に方法はなさそうだった。
「よし、できた。今日はちょっとだけゆっくりできそう」
コーヒーを淹れたひかりは、クレジットカードのウェブ明細を開き、思わず眉をひそめた。
今月の利用額が思ったより大きい。旅行中の支払い、美容サロンの施術料、ホームケア商品の購入費。ひとつひとつは小さいのに、積み上がると無視できない出費になっていた。
「……こんなに使ってた?」
コーヒーを一口すすってから、また画面に戻った。
深呼吸をして、家計アプリを開く。食費、交際費、趣味。支出のカテゴリー別に棒グラフが表示されている。
「まだ、許容範囲。今月は外食を控えればいっか」
口にすると、少しだけ気持ちが楽になった。時計を見ると、もう出社する時間だった。
「うわ、やば……」
何とか仕事をこなして昼休みを迎えると、間もなくスマホが震えた。依子からのメッセージだ。
「今度の土曜って何してる? デートじゃなかったら、韓国カフェ行こうよ」
「ごめん、土曜はサロン予約してる」
「おー、頑張ってるねえ。ついにひかりも美容に目覚めちゃった?」
「そうかも」
「じゃあ、韓国旅行第2弾いっちゃう?」
明細の数字と美容整形の文字が頭の片隅にちらついたが、ひかりは「いいね」と送信してスマホを伏せた。
