泥酔状態で契約書にサイン…
ある日の夜、田中は木田を飲みに誘った。二人が飲みにいくのは珍しいことではなかったが、その日、田中には何としても木田からお金を借りたいという狙いがあったのだろう。
「先輩のおかげで俺はここまでこれたんですよ……」と、田中は自分の事業がいかに順調かを語りながら木田をおだてた。木田は見栄っ張りであり、かつ、おだてられると気が大きくなる性格。これまでその性格が災いしたことも何度かあった。長年の関係から田中はそれを見抜いており、今回の勝負に出たのだ。
「事業拡大のための資金、先輩から借りられたらどんなに心強いか……。契約書、ここにありますよ。先輩が助けてくれたら俺も安心して進められます!」
酒の力とその場の雰囲気、そして見栄っ張りな性格も相まって木田はついに、まともに契約書も読まずサインしてしまった。
契約書の実物を木田から見せてもらったのだがそこには確かに、「木田は田中に金1200万円を貸しつける」という文言と木田と田中双方の署名があった。
「よしよし、これで……よし! んで? ほらほらこのあとはどうすりゃいんだ?」
と、木田は泥酔状態で正常な判断もできないまま、事の重大さには気付かずお茶らけていたという。
普通に考えて、お酒に酔った状態で大金を貸す契約を結ぶのはおかしいと思うはずだ。実際、木田も「今考えればおかしいってわかるけどな…話の流れ的に」と言っていた。「酒の力って怖いもんで正直今も現実感が薄い、どこか他人事みたいなんだよなあ…」とも語っていた。
木田が事の重大さに気付いたのは翌日だった。田中から電話があり、そこで「約束ですからね、契約しましたよ」と念を押されて顔面蒼白になったという。
「そんなつもりなかったのに、なんでこうなったんだろう…」
電話を切った木田はひたすら後悔と自責の念にさいなまれていたという。
●大金を貸す契約書にサインしてしまった先輩は一体どうなってしまうのでしょうか……。後編【「訴訟を起こすからな!俺の邪魔をしやがって!」先輩から1200万円を不正に得ようとした後輩…悪事がばれ逆ギレして起こした「警察沙汰」】では、契約書の有効性、および、後輩の執拗な嫌がらせの模様が明らかに。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
