初めて知った愛理の夢

敦美は指を組み、余計な言葉を飲み込んだ。孝介は急かさず待ち続ける。やがて、愛理が渋々口を開いた。

「テレビの仕事に就きたい。番組とかイベントとか……推しの現場を見て、作る側に興味が出た」

敦美は思わず目を見開いた。初耳だった。

推し活が単なる浪費ではなく、進路の発想につながっていたとは思ってもみなかった。呆れが消えたわけではないが、やりたいことがあるのなら、なおさら今の状態は見過ごせない。

「そうか。愛理がやりたいことなら、俺たちも応援する。な、敦美」

「ええ、本気なら反対はしないわ。でも――」

敦美は静かに愛理の方を見据えて言った。

「そのためには、大学を卒業する必要があるわ」

「でも、別に学歴なんて……」

「学歴がすべてじゃないけど、卒業しておいて損はないわ。それとも、今すぐ中退して働くつもり?」

「誰もそんなこと言ってないでしょ」

孝介が椅子に腰を下ろし、テーブルの紙を端に寄せた。

「じゃあ、大学卒業を目指すのは当然として、一旦話を戻そう。まずは、期限が迫ってる支払いから決めよう」

敦美はうなずいたが、表情がこわばっているのが自分でも分かった。愛理は腕を組み、視線を落としている。

「今回の分は、私たちが立て替える。でも、肩代わりじゃない。ちゃんと返してもらうわ」

「……でも、18万なんて」

拗ねたようにうつむく愛理に、孝介が言葉をつなぐ。

「一度で返せとは言わないよ。毎月いくらなら確実に出せる? そこを決めよう。無理をすれば、また詰まるだけだから」

しばらくの沈黙のあと、愛理が小さく答えた。

「……2万」

「じゃあ、月2万ずつ。月末までにお母さんに渡すこと。遅れたらその月のうちに調整して、うやむやにはしない。いいな? それと、これ以上分割払いを増やさないこと。正直、それが原因でしょ。ここを止めないと、返済が追いつかない」

孝介が念を押すと、愛理は小さくうなずいた。