<前編のあらすじ>

受験勉強に励む娘・美鈴を支えるシングルマザーの数子。受験料だけで10数万円を超える出費にパートの日数を増やしてやりくりを続けてきた。

高卒の数子には、美鈴が図書館司書を目指して大学進学を望む理由も理解できなかった。予備校に通わせてやれなかった負い目を抱えながらも、必死で勉強する娘の姿に何も言えずにいた。

結果はいずれも不合格となり、落ち込む美鈴を励まそうとした数子だったが、「高卒なんだから分からない」と責められ、つい「努力が足りなかったからじゃないの?」と言い返し、母娘の関係は冷え切ってしまった。

●前編【「高卒なんだから分からないでしょ」大学受験に落ちた娘の一言にパートで支えてきたシングルマザーが感じた怒りと後悔

ぎくしゃくする母娘関係

喧嘩をして以来、美鈴との関係はぎくしゃくしていた。会話はほとんどなく、数子が何かを話しかけても美鈴は返事をしなかった。

どうすればまた普通に話せる母娘に戻れるのかは分からないが、このままでいいわけがない。卒業式を迎えた美鈴はもうすぐ高校生ではなくなる。もう1度受験を頑張るにせよ、働くにせよ、決断は早いに越したことはないだろう。

数子は、美鈴との会話の糸口を得るために美鈴が生まれてからほとんど連絡を取り合っていなかった幼なじみに、久しぶりに連絡をしてみることにした。

「あ、もしもし、清美。今ちょっと平気?」

幼なじみの清美はワンコールで電話に応じた。

「どうしたの、めっちゃ久しぶりじゃない」

「ちょっと聞きたいことがあって。清美、図書館で働いてたでしょ。なんか伝手とかないかなって」

「何それ。懐かしい。もうとっくに辞めちゃったよ。それにただのパート。伝手なんてないよ」

「そっか、そうよね……」

「ごめんね。でもどうして?」

「うちの娘がね、図書館司書になりたいんだって。で、就職先とか紹介できないかなって」

数子は慎重に言葉を選んだ。ひょっとすると美鈴の将来がこの電話にかかっているのかもしれない。そう思ったら、スマホを持つ手が少し汗ばんだ。

しかし、清美から返ってきたのは拍子抜けするような、想像外の返事だった。

「あれ、美鈴ちゃんって高校生じゃなかったっけ」

「うん。受験落ちちゃって、なら就職かなって」