訪ねてきた義母の目的

当選金の受け取りを今週末に控えた木曜日、我が家に義母の春枝がやってきた。

春枝はここから車で行けるくらいの距離に住んでいて、光子とも仲が良く、こうして訪ねてくるのは珍しいことではなかった。

いつものようにリビングに招いて、春枝はダイニングテーブルに座る。光子はお茶を出して春枝の対面に座った。

「めずらしいですね、お義母さんがこっちに来るなんて」

すると春枝は嬉しそうに目尻を落とす。

「そりゃそうよ。もう驚いたんだから。宝くじが当たったんですって」

春枝の言葉に思わず固まる。

「……もしかして泰さんから聞いたんですか?」

「そうなの。あの子もとっても嬉しそうでさ。でも本当にすごいわね〜。まさか家族に宝くじの当選者が出るなんて信じられないわ〜」

注意を聞かなかった泰への怒りを抑えながら光子は答える。

「ありがとうございます。あのお義母さん、このことはあまり他の人には言わないでもらえますか……?」

「あ、うん、そうね。危ないものね。分かったわ。それで使い道とかどうなの? もう考えたりした?」

「いや、まあ特にこれっていうのはなくてですね……」

光子はとりあえず本心を答えた。すると春枝がとびきりの笑顔をこちらに向けてきた。

「それならさ、ちょっと私たちのために使ってくれない?」

「……え?」

「ほら、うちってさ、もう建ってかなりの年数が経ってるからあちこちにぼろが出始めているのよ。この前だって雨が降ったら居間の天井から雨漏りがしてきてね〜。とてもじゃないけど生活ができないのよ」

光子は返事に困った。