事業再編に転換、投資を強化 エナジー事業に1.4兆円、M&Aも加速
日立製作所は、先述のとおり構造改革を進めてきました。事業の切り出しは現在も進行中で、24年には空調事業の売却を、25年11月には日立建機のグループ除外を決定しています。
一方、投資を強めている領域もあります。代表的なものがエナジー事業です。20年度~27年度で最大90億ドル(1ドル=155.5円で1兆3995億円)超のグローバル投資を推進しており、25年9月には米国で送配電機器の生産能力強化に向け10億ドル(同1555億円)の投資を表明しました。
さらに、同年10月には米商務省と覚書を締結します。内容には米国における送配電設備の強化や、小型原子炉の建設などが盛り込まれました。AIの普及からデータセンターは増設の傾向で、電力インフラの需要は高まっており、日立製作所の収益機会に結び付いています。
M&Aも積極的です。主なものが21年の米IT大手グローバルロジックの買収で、買収額は当時の為替(1ドル=108円)で9180億円にも上りました。買収後、グローバルロジックは大きく成長しており、単体の売り上げは25年3月期に3017億円に達しています。3年間で2.7倍の急拡大で、IT事業の成長をけん引しています。
また、24年に仏タレス社から鉄道信号システム事業を2822億円で買収したほか、25年1月にはエネルギー産業向け高圧モーターの米ジョリエットを取得しました。さらに、同年9月にはデータ・AIサービスの独シンバートの買収を決定しています。
このように、事業の売却を中心に進めてきた構造改革は、一転して新規の投資も目立ってきました。日立製作所の「選択と集中」が加速しています。