積極財政派の言い分は…

積極財政派は、財政規律の前に経済成長を重視する意見を持つ人たちです。増税よりも減税、歳出削減よりも歳出を増やすことによって経済に刺激を与え、消費を喚起し、デフレ経済から脱却を図るという考え方を重視しています。

減税や給付金、歳出増を行うわけですから、一見すると国の財政は厳しくなります。それに日本は耐えられるのか、という点が、積極財政派と財政規律派の間でしばしば議論になりますし、どちらの言い分も正しいように聞こえてきます。

では、現実の数字を見ると、どうでしょうか。

本当の意味でデフレから脱却できたというのは、国民の所得が増え、個人消費が盛り上がり、企業が設備投資を行って、モノ・サービスに対する需要が高まり、結果的に物価が上昇していくという好循環が実現した時です。

今のインフレは、どちらかというと海外の資源・エネルギー高や人手不足、円安といった外部要因によって引き起こされている面が強く、本当の意味でデフレから脱却できたのかどうかは、議論の分かれるところです。現に日本政府は、現状を「デフレではない状況」としていますが、正式な「デフレ脱却宣言」は出していません。

しかし、今の物価上昇が「かりそめのインフレ」だとしても、今、消費者物価指数や企業物価指数が大幅に上昇しているのは事実です。その結果、実は税収自体はこの数年で増加しています。たとえば2022年度と2023年度の2年間で、2021年度に比べて日本の税収は約5.1兆円も増えていますし、2024年度も2023年度比で約3兆円も増加しました。積極財政で景気を好転させ、デフレから完全脱却できれば、税収が増える可能性があることを示す好例とも言えるでしょう。

10月に入り、日経平均株価は5万円の大台に乗せ、さらなる上昇を目指す勢いすら感じられます。石破前首相は財政規律派でしたが、10月に誕生した高市政権は積極財政派で知られており、その政策に対する期待感が、株価の押し上げ要因になっていると考えられます。