「自分」の「お金」だけではない! 介護・住まい・相続の選択は?
さて、ここまでの整理により、ご自身の老後資金のめどが立ったとして、お金の不安は老後資金だけではありません。50-60代では、親の介護、住まい、相続などのイベントにも対応が必要なケースがあります。
(1)介護・住まい
親が80代や90代になると、介護が必要になることが多くなります。 介護の負担を軽減するためには、事前に家族で相談し、ケアマネージャーや地域の支援サービスと連携を取ることが重要です。
また、介護に関連して、住まいを考える必要も出てきます。終の棲家を見据えると、現在の住居で暮らすのか、建替えや引越しを行うのか、はたまたシニア施設へ住み替えるのか、それぞれ「お金の算段」が異なってきます[図表5−12]。
(2)相続
親の相続についても、事前の対策ができることが理想です。一般に、相続対策は大きく「手続対策」「遺産分割対策」「財産評価対策」の3つがあります。いずれも事前の準備が欠かせませんが、特に遺産分割対策は、事前に決めておくことが可能であれば、相続人同士で争うリスクを減らすことにつながります。
相続争いは、限られたお金持ちの話ではなく、ごく普通の家庭で起きています。「司法統計(令和5年)」によると、調停や審判など裁判所で争うこととなった相続争いのなかで、全体の77.6%は「遺産額5,000万円以下」の家庭でした[図表5−13]。相続争いで親族間の関係が悪く疎遠になれば、「頼れる人」が減ることになり、ウェルビーイングの観点でも望ましいものではないといえます。
これまで述べてきた観点は、すべて当事者間の対話が必要といっても過言ではありません。人生の経営者としては、ご自身の親・パートナー・子ども、親戚などの周囲の方(ステークホルダー)とよく話し合っておくことをおすすめします。
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編 ウェルビーイング学会/ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会
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