退職が近づいてくる50代~60代。今まで仕事や育児を頑張ってきたから、セカンドライフは楽しく過ごしたいと思う方も多いと思います。
楽しい老後を迎えるために、資金面で何を考えておけば良いのでしょうか?
経済的な幸せを示す「ファイナンシャル・ウェルビーイング」の観点から、専門家が解説します。(全4回の4回)
※本稿は、ウェルビーイング学会/ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会編『よくわかるウェルビーイング&ファイナンシャル・ウェルビーイングQ&A~快適な『お金』との関係を実現するために』(一般社団法人 金融財政事情研究会)の一部を抜粋・再編集したものです。
「資産寿命」を延ばすには?
長くなったセカンドライフにおいて資産寿命を延ばすには、長生きとインフレ(物価上昇)の対応を考えることがマストです。
支出面では、長生きにより日常生活費の総額が増えます。特に住まいは、持ち家かつローンがなければ一般的に支出は限定的ですが、賃貸などの場合、終身で一定の支出が続くケースも想定されます。また、健康な状態から病気・ケガなどしてしまうと、医療・介護の費用が嵩んできます。また、これらはすべて、将来にわたり物価が上昇(インフレ)すると、支出がさらに増加する可能性があります。
これら「長生き」ならびに「インフレ」に対し、どのような対応が考えられるでしょうか。
(1)長く働く
勤労収入は、60代以降も人的資本を活かして長く働くことができれば、家計の充足度は高まるでしょう。これまでに積み上げたスキル・ネットワークは、退職前後のキャリアにおいて非常に活きてくるはずです。現在は、定年引上げや雇用継続などで60代前半の就業率が7割超、60代後半でも5割を超える2ため、給与も引き続き受け取りながら65歳からは公的年金の受給も始まる、という方も多いのではないでしょうか。
2 統計局ホームページ/令和4年/統計トピックスNo.132統計からみたわが国の高齢者―「敬老の日」にちなんで―/2.高齢者の就業より。
ただし、これは健康であることが前提といえます。健康を損うと、満足に働くこともできなくなり、かつ医療費などの支出の増大にもつながる、いわばダブルパンチを受ける可能性があることを心にとどめておきましょう。逆にいえば、健康寿命をできるだけ延ばす健康増進の取組みは、資産寿命にも効果をもたらすでしょう。