日銀高官の発言と利上げ織り込み

今週の円高の背景は日銀による利上げの織り込みが高まったことです。野口審議委員の講演を受け、OIS市場では10月利上げの織り込みが一時6割台半ばまで高まりました。一方、本日の植田総裁の発言を受けて5割台まで利上げの織り込みが後退し、円安につながりました。(スライド9)

 

そこで具体的な発言のポイントを見ておきましょう。9月29日、野口審議委員は政策金利を調整する必要性が高まっていると発言しました。経済や物価について下振れリスクがあるものの上振れリスクが高まっていることに警戒を示しました。野口委員の発言に市場が反応したのは、同氏が過去の利上げに反対するなどハト派だったためです。

内田副総裁も日銀の短観を踏まえて企業の景況感が全体として良好であると発言しました。特に、相場は反応しませんでしたが、これは利上げを容認する発言であり、どちらかといえばややタカ派とみてもいいでしょう。

一方、先述の通り、利上げ観測に冷や水を浴びせたのが植田総裁です。経済や物価に関して上振れ、下振れ双方向のリスクを点検すると発言しました。つまり、上振れリスクと同程度の下振れリスクも認識していることになり、利上げ観測の後退と円安、株高を招きました。(スライド10)