従業員エンゲージメントレベルごとの属性

従業員エンゲージメントレベルごとに従業員や勤務先の属性にどのような特徴があるのか。

(1)性別・年代

1 万人アンケートは企業勤務者 8,500 人の年代および男女構成比を総務省「就業構造基本調査」の正規職員・従業員 300 人以上企業と同分布となるよう割り付けしているため、企業勤務者全体の性別・年代別は、男性 72%・女性 27%と男性比率が多く、全体の 61%が 30 代以上の男性で構成されている(図表 2)。

これを従業員エンゲージメントレベル別にみると、従業員エンゲージメントレベルが高いほど 20 代~40 代の若手・中堅層の男性割合が増加し、50 歳以上のベテラン層の男性、30 代~40 代の中堅層女性の割合が減少する傾向にある。一般的に、男性の多くが業務の中核人材として活躍の場が与えられるのに対し、中堅層女性は有価証券報告書等で開示されているように男女の賃金・管理職登用比率等の格差に直面したり子育てとの両立に悩む人が多い世代であること、50 歳以上男性は役職定年などを迎え職責・業務内容などに変化があることなどが影響していると推察される。

〔図表 2〕性別・年代

 

(2)勤務先規模・業種

企業勤務者全体では、40%が従業員数 1 万人以上の企業に勤務し、製造業・非製造業*6に分けると非製造業が 6 割と、非製造業が若干多い割合で構成されている(図表 3、図表 4)。

従業員エンゲージメント別にみると、従業員エンゲージメントが高いと規模(従業員数)の大きい企業割合が高い傾向にある。業種別では大きな変化はみられない。

6  製造業;食料品、繊維・パルプ・紙、化学、医薬品、石油・石炭・ゴム・ガラス製品、鉄鋼・非鉄・金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品、非製造業;農林・水産・鉱業、建設業、電気・ガス業、倉庫・運輸関連業、情報・通信業、卸売・小売業、金融・保険業、不動産業、サービス業、その他

〔図表 3〕勤務先規模(従業員数) 〔図表 4〕勤務先業種

 

(3)従業員の経済的状況

企業勤務者の個人年収と金融資産額は、企業勤務者全体の 50%強が個人年収「500 万円以上 1,000 万円未満」、金融資産額「1,000 万円未満」となっている(図表 5、図表 6)。

従業員エンゲージメントレベルごとにみると、従業員エンゲージメントレベルが高いと個人年収・金融資産額ともに高い関係性にある。前述した従業員エンゲージメントレベルが高いほど、一般的には個人年収が高いとされる男性割合や大企業割合が高まることも影響していると考えられる。

一方、すべての従業員エンゲージメントレベルで、概ね 50%強の人が個人年収 500 万円以上 1,000万円未満、金融資産額 1,000 万円未満の階層に属しており、企業勤務者の中核を形成している。

〔図表 5〕個人年収(額面) 〔図表 6〕金融資産額

 

※図表 5・図表 6 とも「わからない・答えたくない」を除く。

(4)勤務先の退職給付制度

勤務先が導入している退職給付制度と従業員エンゲージメントレベルの関係をみる(図表 7)。なお、本設問は回答者自らの加入・未加入にかかわらず、勤務先が導入している退職給付制度を回答している(複数回答)。

企業勤務者全体では勤務先の 23%が「確定給付企業年金制度(DB)」を、64%が「企業型確定拠出年金制度(DC)」を導入しており、15%が「退職一時金制度など」を実施している。

従業員エンゲージメントレベルごとでは、従業員エンゲージメントレベルが高い人の勤務先では、「確定給付企業年金制度(DB)」、「企業型確定拠出年金制度(DC)」の導入割合も高い関係になっている。このように、従業員エンゲージメントレベルと勤務先の企業年金制度(確定給付企業年金、企業型確定拠出年金)の導入割合は正の相関関係にある。一方、「退職一時金など」は従業員エンゲージメントレベルが高くなってもその実施割合にあまり変化が見られない。

確定給付企業年金制度・企業型確定拠出年金制度という企業年金制度と退職一時金制度が示す違いについては、自ら運用を行う企業型確定拠出年金制度はもちろんのこと、確定給付企業年金制度においても、継続的あるいは制度変更などがある都度、企業または労働組合等から従業員へ周知が行われることもあり、退職一時金制度等よりも従業員認識度が高いことが一因と思われる。このように社内制度を従業員が認識し、自らの経済的メリットを実感できる機会があるかということも、従業員エンゲージメントレベル向上に影響していると考えられる。

〔図表 7〕勤務先の退職給付制度(複数回答)