少子高齢化が進むわが国において、政府は女性が出産することに伴う離職を防ぐため数々の施策を行っています。今回は会社員の夫婦の出産・育児に係る休業と給付について説明します。出産・育児については、労働基準法と育児・介護休業法による休業や、健康保険法と雇用保険法による給付のルールがありますので、両方の側面から説明したいと思います。

育児休業取得の現状

まず、わが国の育児休業取得の現状について見てみます。

2024年度までの育児休業取得率の推移を見ると、2022年10月1日から2023年9月30日までの1年間に、在職中に出産をした女性のうち、2024年10月1日までに育児休業を開始した人の割合は86.6%となり、2010年以降を見ても概ね80%台を推移しています。

一方、同期間に配偶者が出産した男性の育児休業(産後パパ育休を含む)を開始した人の割合は40.5%となっており、女性に比べるとまだまだ高いとは言えませんが、この5年くらいで急速に上昇してきています。産後パパ育休を利用する男性が増えていることが上昇の大きな要因となっています。しかし、100人以上の会社では、男性の育児休業取得率が5割を上回っているのに対して、30人未満の会社では25.1%にとどまっており、小規模企業では男性の育児休業取得に対する理解の浸透が課題となっています。

【育児休業取得率の推移】

 
(出所)令和6年度雇用均等基本調査よりアセットマネジメントOne作成
 

このように男性の育児休業取得率が上昇してきた背景には、近年、女性活躍を推進するため、政府が男性の育児休業の取得を推進していることがあります。

女性活躍推進法においては、女性の職業選択に資する情報の公表義務の中に「男女別の育児休業取得率」を項目の一つに盛り込み、政府目標として、男性の育児休業取得率を2025年までに50%、2030年までに85%を掲げています。

また、2025年4月から改正育児・介護休業法が施行されており、①子の看護休暇の見直し(小学校就学の始期に達するまで⇒小学校3年生修了まで)、②所定外労働の制限の対象拡大(3歳未満の子を養育する労働者⇒小学校就学前の子を養育する労働者)、③育児休業取得状況の公表義務拡大(従業員数1,000人超の企業⇒従業員数300人超の企業)などが盛り込まれ、男女とも仕事と育児を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の拡充が行われています。