エスカレートする姑に夫婦は
その日の夜の寝室で、美奈子は卓夫に相談を持ちかけた。
「ねえ、お義母さんのこといい加減注意してよ。今日もまた大量に防災用品買ってきてたんだけど」
「……そうか。どんどんエスカレートしていってる感じがするな」
卓夫は困ったように眉間に皺を寄せた。
「テレビやネットとかでも言ってるじゃない、南海トラフがどうとか。あれを見てかなり影響を受けてるみたいでさ」
「ネット上のデマと情報を区別することができないんだろうな。母さんは震災の被害を受けてるから普通の人よりもより信じやすいところはあるだろうし」
「備えてくれてるのは私だってありがたいし、私だって家族のために何かやっておかないとくらいは思ってる。でもさ、お義母さんはさすがに異常だよ。これ以上増えるようなことがあったらあなたから注意してもらわないと」
美奈子がそう言うと卓夫は渋々頷いた。
「……そうだな。もしそうなったら俺から言うよ」
卓夫はあまり母親に強く言えるタイプではないが、今回ばかりはしっかりしてもらわないといけないと思った。
それからしばらくして美奈子が買い物を終えて家に帰ると玄関に段ボールの箱が6つ置かれてあった。段ボールの外側にはメーカー名が記されていて、それが水だとすぐに分かる。