定期分配型投資信託 ─ 「資産活用」を前提とした仕組み
「定期分配型」とは、年4回以上の分配を目指す、日本で根強い人気を誇ってきた投資信託である。定期的に分配金を払い出す仕組みは、生活資金に回したい層にとって実用性が高い。NISAの非課税メリットと組み合わせることで、税負担なく分配金を受け取れる点は魅力といえる。
一見すると株式の配当のようにも思える分配金だが、その性質は大きく異なる。株式の配当は企業活動から生み出された利益を株主に還元するものであるのに対し、投資信託の分配金は運用益に加え、場合によっては元本の一部を取り崩して支払うことができる。つまり「利益還元」と「資産の払い戻し」が混在しており、必ずしも資産成長を意味しない点に注意が必要だ。
基本的に、分配金を受け取るたびに資産は減り、再投資による複利効果が働きにくくなる。その意味でも、分配型ファンドは資産の活用フェーズにある投資家向けの商品であり、長期の資産形成を目的とするなら、むしろ決算回数の少ないファンドを選ぶ方が合理的といえる。
身の丈に合った分配ならETFという選択肢も
もし「分配金を安定的に受け取りたい」というニーズが明確であれば、ETFも選択肢となる。ETFは仕組み上、投資信託のように分配可能利益を内部に留保できず、得られた配当は原則として投資家に払い出される。身の丈に合ったキャッシュフローを重視する投資家にはわかりやすい仕組みだ。そのため、高配当株を対象としたETFであれば、投資信託とは異なり、保有企業から得られた配当が相応に投資家へ還元されることが期待できる。
高配当株、連続増配株、そして、定期分配型の投資信託はいずれも、「インカム」をキーワードにした投資スタイルだが、目的や効果は大きく異なる。いま必要なのは実際のキャッシュフローなのか、それとも長期的な複利効果を最大化したいのか。あるいは、分散投資の一環として高配当株や連続増配を取り入れたいのか。まずは、自身の投資の軸を定め、その軸に沿って判断できるよう解像度を高めることが、長期的に迷わない投資につながる。