シェア独占の製品多数 カメラ技術で異業種を開拓

富士フイルムホールディングスが支持される理由の1つが、盤石な事業基盤です。同社は祖業にとどまらず、異なる事業へ相次いで参入しました。また、単に多角化しただけでなく、参入先の市場でも高いシェア獲得に成功しています。

富士フイルムホールディングスの祖業はカメラフィルムの製造です。カメラフィルムは2000年代、デジタルカメラの普及で市場が急速に縮小します。さらに、スマートフォンの台頭はカメラ自体の需要にも逆風でした。同業でかつて市場を席捲した米コダックは2012年に破綻を経験しています。

一方、富士フイルムホールディングスはカメラ以外の事業にも乗り出していました。1970年代からヘルスケア領域や印刷機、エレクトロニクス材料などに進出し、カメラ以外の収益源を構築します。

後発ながらシェア獲得に至ったのは、高い技術力が背景にあります。カメラ事業で培った光学技術は医療用の画像診断やディスプレイなどに、カメラフィルム事業で獲得した化学技術は半導体やディスプレイ向けの材料などに応用し、革新的な製品を生み出してきました。

現在では各業界で独占的なシェアを持つ製品を多数保有します。事業が分散されており、しかも高い競争優位性を持つことは、投資家の関心につながっていると考えられます。

【市場シェア上位の製品】

・医療用画像情報システム
・X線画像診断機器
・半導体プロセスケミカル(洗浄・乾燥・除去用の薬剤)
・半導体向けネガ型フォトレジスト
・イメージセンサー用カラーフィルター材料
・ディスプレイ向け偏光板保護フィルム
・アナログ印刷向け刷版(さっぱん)
・デジタル印刷機
・産業用プリントヘッド

出所:富士フイルムホールディングス 事業説明会資料

なお、近年は再びカメラ関連事業が成長しています。SNSなどからカメラ需要が喚起され、追い風になったと考えられます。富士フイルムホールディングスも「チェキ」などのインスタントカメラが人気化し、同事業は最大の収益源となっています。

富士フイルムホールディングスのカメラ関連事業の営業利益(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:富士フイルムホールディングス 決算短信より著者作成