トラック大手、世界で快走 タイ中心に新興国で高シェア
まずは会社の概要を解説します。
いすゞ自動車はトラックやバスといった商用車の世界的なメーカーです。1916年に東京瓦斯電気工業の自動車部門として創業し、企業としては1937年に設立されました。1942年に現在の日野自動車と分離し、1949年に社名をいすゞ自動車へと改めます。
20年にはスウェーデンのボルボ・グループと提携し、同グループ傘下だったUDトラックスを取得しました。売り上げは国内トップクラスで、世界でも上位です。
【主な商用車メーカーの売り上げ(2024年度)】
・ダイムラートラック:9兆1931億円(540.77億ユーロ)
・トレイトン・グループ:8兆704億円(474.73億ユーロ)
・ボルボ・グループ:8兆602億円(5268.16億クローナ)
・パッカー:5兆496億円(336.64億ドル)
・いすゞ自動車:3兆2356億円
・日野自動車:1兆6972億円
※ユーロは170円、クローナは15円30銭、ドルは150円で換算
※いすゞ自動車および日野自動車は25年3月期、その他は24年
出所:各社の決算資料
大株主には三菱商事や伊藤忠商事といった大手の総合商社が並びます。両社とは協業関係にあり、商用車の販売を委託しています。なお、トヨタ自動車とは18年に資本関係をいったん解消しますが、21年に再提携しており、同社は三菱商事と伊藤忠商事に次ぐ株主となっています。
商用車と並ぶ主要製品がピックアップトラック(荷台を備えた大型の乗用車)です。ピックアップトラックは主に海外で展開しています。また、エンジンや部品など、完成車以外も事業範囲です。エンジンは自動車のほか、建設機械や冷凍機など、多くの産業機械に用いられます。ほかに、整備などのアフターサービスや、物流事業者向けにリースや車両管理といったソリューションも提供します。
【製品およびサービス別の売上収益(25年3月期)】
・大型・中型トラックおよびバス:8625億円
・小型トラックおよびバス:7426億円
・ピックアップトラックおよび派生車:7401億円
・エンジン:1054億円
・その他:7850億円
※その他…部品の販売、整備・サービス、中古車の販売およびコンポーネント(組み立て品)
出所:いすゞ自動車 有価証券報告書
売り上げの6割は海外で、30カ国以上でシェア首位を獲得しています。特にタイで人気が高く、ピックアップトラックで約4割のシェアを握ります。また、アフリカや中近東、中南米向けの販売も少なくありません。このように、新興国向けの販売が多いことがいすゞ自動車の特徴です。
【地域別の売上収益(25年3月期)】
・国内:1兆2754億円
・北米:2792億円
・アジア:5549億円
・その他:1兆1262億円
※北米…米国、アジア…タイ・中国・インドネシア・フィリピン、その他…オーストラリア・サウジアラビア・メキシコ・アラブ首長国連邦・コロンビア
※アジアのうちタイ:2242億円
出所:いすゞ自動車 決算短信および有価証券報告書