最終利益は過去最高 今期は苦戦、上期は27%営業減益を予想

続いて業績を解説します。直近10期では、21年3月期までの2期で苦戦しました。20年3月期は消費増税に伴う需要の減退や新型コロナウイルスの影響、21年3月期はコロナ禍の継続が主因です。減損損失や構造改革費といった一時的費用も生じたことから、純利益はさらに落ち込み、2期連続で最終赤字となりました。

翌22年3月期からは大きく回復します。コロナ禍の落ち着きに伴い市場が回復し、大幅な増収増益となりました。特に純利益は、税金費用の減少などから過去最高益となります。売り上げは現在まで拡大傾向が続いています。

25年3月期は4期ぶりの営業減益でした。時計は欧米の好調を中心に増収となった一方、中国での販売不振や「シチズン」ブランド時計100周年に伴う宣伝費が重く、利益を減らします。工作機械は、アジアを除く地域で販売が伸び悩み、減収減益での着地となりました。なお、純利益は投資有価証券の売却益76億円を計上したこともあり、最高益を更新しています。

シチズン時計の業績(2016年3月期~2025年3月期)を表した図表
 
出所:シチズン時計 決算短信より著者作成
 

最後に業績の見通しです。今期(26年3月期)は売上高が横ばい、利益は減少を見込みます。コア事業の時計と工作機械は増益ながら、増加額が小幅にとどまる見通しのため、デバイスの減益分が上回る計画です。また、為替は円高を予想しており、これも減益を見込む要因とみられます。

【シチズン時計の業績予想(26年3月期)】

・売上高:3180億円(+0.4%)
・営業利益:200億円(-2.9%)
・純利益:200億円(-16.2%)
※()は前期比
※25年3月期時点における同社の予想

出所:シチズン時計 決算短信

今期は工作機械を中心に上期までは苦戦を想定しています。連結の第2四半期の累計で売上高は1.0%減、営業利益は27.0%減を予想します。中間決算までは投資家の反応は厳しいものとなるかもしれません。第1四半期の決算は8月13日の公表を予定しています。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)