「市民」冠する時計メーカー、海外売上7割 工作機械も世界シェア首位

シチズン時計は1918年に創業しました。当初は尚工舎時計研究所として誕生し、時計の国産化に乗り出します。第1号の懐中時計を1924年に開発したところ、当時の東京市長が「永く広く市民に愛されるように」との思いから「シチズン(CITIZEN:市民)」と名づけます。これに由来し、1930年にシチズン時計として設立します。

時計は現在も中核事業です。上位ブランド「ザ・シチズン」「エコ・ドライブ ワン」「カンパノラ」を中心に、国内外で主に機械式の腕時計を製造販売します。また、完成品だけでなく中核部品であるムーブメントも手掛けており、販売のシェアは世界トップクラスです。

時計事業と並び、コア事業に位置付けるのが工作機械です。工作機械は、時計部品を作るため開発に乗り出しました。CNC(コンピュータ数値制御)の自動旋盤を製造しており、シェアは世界トップです。ほかに自動車部品や電子部品、またプリンターといった電子機器も製造します。

【セグメント情報(25年3月期)】

シチズン時計のセグメント情報(25年3月期)を表した図表
 

※旧・電子機器他はデバイスへ集約

出所:シチズン時計 決算短信および決算説明会資料
 

売り上げの大部分は海外です。特に米国では中価格帯の腕時計でトップシェアを握っており、主要な市場となっています。また欧州やアジア向けも多く、売り上げの7割超を海外が占めます。

【地域別売上高(25年3月期)】
・日本:805億円
・アジア:745億円(うち中国:282億円)
・アメリカ:919億円(うち米国:771億円)
・欧州:668億円
・その他:33億円

出所:シチズン時計 有価証券報告書

注意点として、借入金の一部に財務制限条項が付されていることは知っておきたいところです。大まかに、純資産が前期比25%超で減少するか、または2期連続の営業損失が生じると、一括返済を強いられる可能性があります。

もっとも、財務はおおむね健全です。25年3月期までの10年で純資産の減少率は最大でも13.7%であり、営業損失はコロナ禍の影響を受けた21年3月期に限られます。また有利子負債は700億円と、自己資本(2559億円)に対する比率は27.4%であり、資金調達の多くは自己資本でまかなっている状況です。

シチズン時計の営業利益および純資産の変動率(2016年3月期~2025年3月期)を表した図表
 
出所:シチズン時計 決算短信より著者作成