高配当株の落とし穴
しかし、配当利回りの高さだけに注目すればいいわけではありません。たとえば、業績が一時的に悪化した企業では、株価の下落によって配当利回りが高くなるケースがあります。こうした企業は、近い将来減配を余儀なくされて配当利回りが低下する可能性がありますし、株価の下落も懸念されます。
また、利益に対する配当の割合を示す指標である「配当性向」が、極端に高い企業にも注意が必要です。近年では、成熟した業界の企業などの間で、株主還元を強化する動きが広がっています。これ自体は好ましい傾向ですが、将来の成長のための投資を犠牲にして配当に資金が回っている可能性もあります。また、その企業が投資家からの支持を集めるために利益の大半を配当に充てている場合、業績が悪化すれば減配を余儀なくされる可能性が高いと考えられます。
さらに、高配当株の値動きに対する誤解にも注意が必要です。一般的に、配当利回りが高くなってくると、配当狙いの買いが入って株価が下がりにくくなる(下値抵抗力がある)ため、高配当株にはそうした買いが入りやすいと言われています。確かにそういった一面もありますが、決して「高配当株の株価は下がらない」という意味ではありません。
たとえ企業業績が安定していたとしても、株価は企業業績のみで決まるものではありません。そして、「〇〇ショック」のような急激な市場変動時に限らず、配当利回りを上回って株価が下落することも珍しくありません。
株式投資である以上、値動きのリスクは常に伴うため、「高配当株を選べば安心」という考えは誤解だと言えます。むしろ高配当株投資の魅力を活かすためには、こうした“落とし穴”にも目を向けながら、慎重に銘柄を選定していく姿勢が必要なのだと思います。